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聖なる怪物たち 第6話

第6話




『あの日から私の望みは一つだった…。

 だから 弱さに付け入り…

 正義を踏みつけた。

 全てを闇に葬り全てを終わらせ 

 嘘を真実に変えた。

 真実は 永遠の眠りにつくはずだった。
 
 でも闇に差す 一筋の光のように

 あの事件を終わらせられない人間がいた。』


三恵の住所が存在しないことに困惑する健吾に
声をかける平井。

「何か お困りですか?

 あっ…確か 司馬先生ですよね。

 大久保記念病院の。」

「はい…。 ですが どうして?」

名刺をみせる平井。

「刑事?驚きました。 彼女一人っ子だと言っていたので。」

「なんか 刑事の兄貴がいるって言いたくないみたいで。」

「でも 今日はどうして ここに?」

「最近 瑶子の様子が変で…。それで後をつけちゃったんです。」

「ああ…。多分 僕のせいです。すみません。」

「それは 今日のお探し物と何か ご関係が?」

「え?」

「おっしゃってくだされば お力になりますよ。」

「いえ 大丈夫です。」

「すいませんでした。お引き留めしちゃって。

 あっ 尾行した事 瑶子に内緒で。怒られますから。」

平井、刑事っていうのは嘘っぽいな・・。

羽振りのよくなった院長。

「ええ。 新しい内視鏡とエコーの導入を検討してるんです。ええ。

 カタログ頼みますね。 はい。」

そこへ健吾が入ってきて、
あの赤ちゃんの引き取り先の住所が
まったくのデタラメだったと告げました。

「調べたんですか?」

「院長。 あのご遺族に 

赤ちゃんを渡してしまってよかったんでしょうか。

 もう一度 ちゃんと調べて…。」

「あの一件は もう終わったんです。」

「あの子を母のない子にしてしまったのは 僕です。

 僕にはあの子を見届ける責任が…。」

「もういいと言ったでしょ!

 これ以上 あの件を蒸し返す事は

 ご遺族の感情を逆なでするだけです。

 詮索無用。 いいですね。」

日向家。
敏雄の両親はともかく希実代までまたいます。

圭子の生んだ子が日向家の跡取りに
なっているようで今までの跡取り候補の孫には
冷たい祖母。

「でも 慶君って 敏雄さんにも

圭子さんにもあまり似ていないわね。

 本当に敏雄さんの子かしら?」

「希実代さん…何をおっしゃるんですか。」

「流産して いくらも経たないうちに 

妊娠なんて出来るものなの?」

「希実代さん。」

「お義母様もそう思われますよね。」

すると姑が希実代の頬をピシャリ!!

「二度と 日向家の敷居を

またがないでちょうだい。」


ああ、すっとした。
圭子も満足そう。

記者に囲まれている敏雄。

「奥様は 保護者の方から

「現代の聖母」といわれてるそうですね。」

「どうも。それは 最近

子供が生まれたばかりだからでしょう。」

「出産後 奥様は 育児本を書かれてるそうですが。」

「ええ 来月末には出版します。

 なかなかいい本に仕上がっています。

 産休が明けたら ぜひ

皆さんも妻の取材にいらしてください。」

取材おわり。

「理事長 掲載用に聖応幼稚園の日常の写真が

 1枚欲しいという社があるのですがどれをお渡しすれば?」

「この中から あとで好きなものを選ばせてくれ。

 マスコミを使って 圭子と慶の顔をどんどん売ってくれ。

 圭子を 世の母親たちのアイコンにしましょう。」

「手配します。」

三恵の写真を破ってゴミ箱に・・。

三恵の墓に手をあわせる優佳。

「有馬三恵さんのご遺骨

ご位牌は責任を持って供養致します。」

「よろしくお願い致します。」

糸川の検査結果。

「やっぱり 胃がんだったか…。

 色んな患者を見てきたから察しはついてたよ。」

「今のところ 5センチの腫瘍が胃の体上部にあって
 
 手術で切除するか化学療法を行うか

 糸川さんの希望を伺って検討するつもりです。」

「希望っつったら 一つだ。手術は絶対に勘弁だ。」

「え?」

「胃を切っちまったら俺の唯一の楽しみは どうなる?」

「ですが やはりオペは必要です。

 化学療法では根治出来ないですし…。」

「こうなっちまったら長生きしようなんて思わねえよ。」

「そんな事 言わないでください!」

「食いたいもんをたらふく食って死ぬ!

 俺の希望は それだけだ。」

糸川は出て行ってしまいました。

「あの おっさんらしいな。

 ったくたいした食い意地だ。

 こんなに ため込んで。」

没収したお菓子が山ほど。

「腫瘍は5センチで全部 摘出しない事には始まりません。

 リンパ節転移の瀬戸際です。」

「いいんじゃない?」

「本人の希望なんだから切らなくて。

 遠隔転移したら手がつけられなくなります。

 なんとかやる気になってもらって…。」

「本人のオーダーでもあるんだし。」

「悪化したら うちである程度の緩和ケアも出来るよ。」

「でも…。」

「抗がん剤 やりながらオペの説得 続けりゃいいよ。

 なんか 最近 お前 暗いな。テンション上げろ!

 今日の昼飯は 岡ちゃんがおごってくれるからな。」

「はあ!? なんすか? それ!」

「自分だけ ここイチ抜けする お詫びだろう。」

「岡先生 辞めるんですか!?」

「念願叶って長野に帰るんだよ。なあ?」

「あれだけ引き留められてたのに案外 あっさりですよ。

みんなは食事に。
そこへ電話がなり優佳がとりました。

「はい 大久保記念病院ですが。」

「恐れ入ります。 私みなみ野タクシーの

 神田と申しますが そちらに司馬先生は?」

「ただ今 外出しておりまして。ご伝言をお預かり致します。」

「あの 11月4日の夜に 

 そちらに妊婦さんを運んだ車があったかどうか

 お問い合わせを頂いていたんですが

 うちには そのような配車はございませんでしたので

 そう お伝え頂けますか」

「わかりました…ありがとうございます。」

圭子の家。
ベッドに赤ちゃんがいない。

「慶?慶?慶… 慶!」

あせっていたら姑が赤ちゃんを抱いておりてきました。

「この子 随分 重くなったわ。

 偉いわねえ。 ん?」

「お義母様…! どうやって 中へ?」

「ここを建てた時から合鍵は持ってるの。」

「合鍵?」

「何かあった時 便利でしょう。ねえ? フフフ…。」

「お義母様 慶はこれから お昼寝の時間なんです。

 ね。 ほら おいで。」

「この泣き方は  おなかよ。母乳をあげてちょうだい。」

「あ… 私 出にくい体質みたいで。」

「あなたは かわいそうねえ。」

「かわいそう?」

「我が子への愛情があれば 出ないはずないもの。」

「愛情は関係ないと思いますけど。」

「仕事の片手間に育児なんて 嘆かわしいわ。」

「締め切りが近いので仕方がないんです。」

「もう結構よ。 あなたが 育児本を執筆してる間は

 私が 毎日この子の世話をしに来ます。」

「ベビーシッターを頼みますから。」

「日向家の跡取りを他人に任せるなんて

 言語道断です。」

「今は それが普通なんです。」

「私の考えが古いとおっしゃりたいの?」

「子育ても時代と共に変わりますから。」

「あら なんでも新しければいいってものでもないわ。

 この子の名前だって そうよ。

 慶 なんて  男か女かわからない名前ではなく

 日向家の男子に ふさわしい名前を私が考えてたのよ。」

「敏雄さんは気に入ってくれましたけど。」

「それは あなたへの気遣いよ。あの子は優しい子だから。」

「気遣いではなく 私を愛してくれてるんです。」

「フフッ 愛してる…。」

糸川を説得する健吾。

「手術なんて やだね。

 切ったって完全に治るわけじゃねえんだろ。」

「でも 今よりよくなる可能性が…。」

「痛い思いして 怖い思いして食いたいものも食えなくなって。

 それで ちょっぴり寿命が延びましたっていうんじゃ

 割に合わねえじゃねえか。」

「それでも 僕は1日でも 1分でも 1秒でも

 糸川さんに長く生きてほしいんです。

 諦めないでください。

 僕が糸川さんの手術をします。

 痛くても 怖くても僕がそばにいます。

 しっかり治して その時になったら

 一緒に美味しいものを食べましょう。 糸川さん。」


「ああ ああ!

 せっかく淹れたお茶が冷めちまう。

出てってくれよ!」

ゆのみをたおしてしまう糸川。

そこにあった雑誌の表紙に敏雄の顔をみて
タクシーに乗っていた男性と同じだと
気付く健吾。
その健吾をみつめる優佳。

敏雄をたずねてきた母。

「直接 店に行った方が楽だったろう。」

「敏雄さんの職場を見たかったのよ。

 2人で お食事なんて 随分 久しぶりだから。」

「圭子が色々と世話になってるお礼だよ。」

「当の本人はどう思ってるのかしらね。」

「彼女だって感謝してるよ。

 慶のお披露目もぜひ来てほしいって。

 ホテル ベルクラシックでやるから。」

「会場は 芥川会館ではないの?」

「圭子が そっちの方がセンスがいいって。」

「日向家は 代々 芥川会館です。

 圭子さんも知ってるはずよ。」

「まだ出産後だし 今回は圭子の顔を立ててやろうよ。」

「圭子さん 子供を産んでから

 勘違いしてるようね。」


二人が外へでてくると
敏雄に声をかける健吾。

「日向敏雄さんですね。」

「何か?」

「大久保記念病院の司馬と申します。

 うちの病院から 赤ちゃんを引き取られましたよね?」

「人違いをされているのでは?」

「あの赤ちゃんは今 どこにいるんですか?」

「人違いだと言ってるだろう。なんなんだ 君は。」

「あなたの奥さんが あの子の生まれた2日後に

 赤ちゃんを産んだと記事で見ました。」

「あなた 何をおっしゃってるの?」

「おい 君…不審者だ 連れ出してくれ。」

「お願いします!あの子の事を教えてください!

 日向さん! お願いします!あの子の事を教えてください!

 日向さん! お願いします!日向さん! 日向さん!」

健吾はつまみだされました。

「敏雄さん 今は大切な時よ。身辺整理は出来てるの?」

「お母さんが心配するような事はないよ。

 あの男 本当に勘違いしてるだけですから。

 さあ 行こう。」

家に戻った健吾。
名刺をみつけて驚く瑤子。

「瑶子?どうかした?」

「ううん なんでもない。」

「そう…。今日は疲れたよ。

 あの赤ちゃんを連れていった人を見つけてさ…。

 すごい大金持ちの学校経営者だった。

 ほら。」

と雑誌をみせました。

そこへ院長から電話が。
院長によばれ塩野教授も同席。

「大学病院に戻る? 私がですか?」

「今度 慶林大学で 手術支援ロボットを導入した

 胆のう摘出手術のチームを作るそうです。」

「手術支援ロボット?」

「難易度は高いが成功すれば 国内初の例になる。」

「司馬先生のように 優秀で熱心なスタッフを

 ぜひ返してほしいと わざわざいらしてくださったんだよ。」

「ですが ここに担当の患者さんもいますし。」

「こちらの事は気にしないで。

 素晴らしいお誘いじゃないですか。」

「週明けには うちに出勤してくれたまえ。」

「ちょっと待ってください。なんで こんな急に…。」

「幸運というのは 突然舞い込むものですよ 司馬先生。」

「いや ですが こちらでまだ やり残した仕事が…。」

「もう この病院に あなたの席はありませんよ。」

「えっ?」

竹内がこの病院に。
ナースに囲まれていました。

「竹内先生のお父さんって

 黎王会病院の院長先生なんですか?」

「まあね。」

「竹内!お前 なんで…。」

「今日から こっちに異動した。お前の後釜。」

「後釜って…。」

「すみません。」とそこへ瑤子が通っていきました。

「そうだ みんな メアド教えてよ。」

「よかったな 出世街道に戻れて。」

「水原先生!なんで 急に こんな…。」

「なんにも言わずに喜べよ。」

「司馬先生 先生の私物はこちらに まとめておきました。」

「師長! 師長! あの…!」

「竹内先生。」

「はい。」

「院長に ご紹介します。」

「あっ 師長もアドレス教えてください。

 あれ? 師長?」

師長、無視。

屋上にいた健吾のもとへ瑤子が
やってきました。

「よかったね 大学病院に戻れて。」

「おかしいと思わないか?

 おかしいだろ。こんな いきなり異動なんて。」

「私にとってはいいタイミングだった。

 別れよう 健吾。」

「何言ってんだよ…。」

「健吾といても つまんないの。」

「瑶子まで 一体 なんなんだよ。なんで そんな…。」

「健吾には もう飽きたの!ただ それだけ。」

「そんなの一方的すぎるだろ。納得いかない。

 ちゃんと話し合おう。俺は…。」

「私の物は捨てて。」

鍵を返しました。

白衣をたたんでおいているところに糸川が。

「何やってんだよ。」

「糸川さん。」

「辞めるって どういう事だ?」

「僕も一体何がどうなってるんだか…。」

「俺を… 切ってくれるんじゃなかったのかよ?」

「そのつもりだったんですが…。」

「偉そうな口 たたいて 

 大学病院に帰れるとなったらあっさりポイか。

 俺は… あんたになら命 預けられる。

 あんたの手術で 一日でも長く生きたい。

 そう思ったんだよ。」

「糸川さん…。」

「それが なんだ?

 今頃になって トンズラか。」

「申し訳ありません。」

「せいぜい大学病院でお偉いお医者様になりゃいいよ。

 どけ。」

とぼとぼと病院をでていく健吾をみている優佳。
そして院長も。

院長と敏雄は携帯で会話。

「これで 全て片付きましたね。」

「日向さんのお口添えのおかげです。

 塩野教授が 迅速にご手配くださいました。」

「司馬健吾を 

 大学に戻したのは 義姉の提案です。」


「クビや左遷より ポストを与えて管理する方が

 コントロールしやすい。

 フッ まったく 師長らしい発想だ。」


「まったく。

 怖い人ですよ  あの人は。」


健吾の部屋にはペアのカップ。
またあの雑誌を手にとり
竹内に電話。
そばには瑤子もいて会話をきいていました。

「竹内 日向敏雄って知ってるか?」

「知ってるも何も 

 日向は 慶林の塩野教授のパトロンだ。」

「え…?」

「お前も 前に 日向敏雄の嫁さんが流産して

 ドレスのまま運ばれたの見たじゃん」

「日向の奥さんってそのあと どうなった?」

「それよりやっぱ ここは不便だなあ。

 金がよくなきゃ 絶対断ってた。」

「金?」

「これからは 慶林大学がここを全面支援するんだって」

圭子と優佳。

「発育は順調ね。反応もいいし 心雑音もないわ。」

「よかった。」

「ねえ 病院は大丈夫?」

「あなたは何も心配しないで。慶の事だけ考えて。」

「ありがとう 姉さん。

 私ね これでやっと幸せになれた気がするの。

 この子は 姉さんとも 血の繋がりのある子よ。

 この子は 姉さんと私の生きてきた証しでもあるの。」

「ありがとう 圭子。」

「この子のために 事業も もっと拡大しないと。」

「職場復帰するの?」

「早くしたいんだけど 日向のお義母様がうるさくて。」

「敏雄さんのお母さんとは穏便にしておくのよ。」

「これからは 言いたい事は言うわ。」

「圭子。」

「私 慶を守るために強くなるの。

 あの人の言いなりになってたら 慶がダメになるわ。」

そして健吾は大学病院へ。
圭子のカルテを閲覧しようとしますが
アクセス不能。

「今日からまた よろしくお願いします。」

大学病院に戻った健吾。

「あ… あの 医局長。

 閲覧出来ないカルテがあるんですが…。」

「ああ… ロックしてあると

 塩野教授の端末でしか見られないよ。

 教授に頼んだら?」

「あ いえ… 去年2月に産婦人科で行った手術について

 確認したい事があって。

 担当の先生ならご存じでしょうか?」

「ちょうど そのくらいの時期に 

 産婦人科先生も オペ看も系列に異動しちゃったから

 いないと思うけど…。」

「全員ですか!?」

新しい機械もはいった病院。

「この内視鏡は従来の倍以上の解像度で

 検査の精度が格段に向上しますよ。」

「ほ〜!あ ちょっと!

 もっと丁寧に運んでね。高いから。

 そっち エレベーター気をつけてください。」

糸川をよびにきた師長。

「師長 おかしいと思わねえか?」

「何がですか?」

「若様がいなくなって ここの病院には

 最新の医療機器と 

 新しい医者とナースが 次から次へ送り込まれる。」

「ようやく 院長の経営努力が実ったんですね。」

「あの院長にそんなこっちがあるもんか。」

「そんなにご不満なら 

 退院なさいますか?」


「あの妊婦が死んだ夜から おかしな事ばかりだ。」

大学病院。

「新しい手術チームの件ですが

 僕は具体的に何をしたらよろしいでしょうか?」

「ああ… まあ…症例の検討資料でも作っておいてくれたまえ。」

「わかりました。 ですが 私手術支援ロボットについて

 不勉強で いくつか質問があるんですが…。」

「厚生労働省の沢見さんがごあいさつにお見えです。」

「おお 顔を出さないとな。

 君 待っていたまえ。

 沢見さんはどちらでお待ちを?」

「512号室でお待ちになってます。」

教授がいなくなったすきに
圭子のカルテをしらべようとする健吾。
しかしそこにもう教授が戻ってきました。

「随分 早いですね。」

「まったく 役人っていうのは

 すぐにデータを見せろだのうるさくてかなわん。」

再びでていったすきに
今度はカルテをさがします。

「うーん…。

 日向… 日向圭子 日向圭子…。

 うわっ!これだ…!

 2月14日…。子宮摘出…?」


「どういう事だ!?

 人を呼び出しておいて所用で帰るなんてふざけた役人だ!

 大体 君も君だぞ!もっと はっきりしなさい!」

「はい。 申し訳ありません!」

「もういい。 戻る!」

教授の声がきこえ
あわてて元に戻す健吾。

「随分汗をかいているようだが?」

「あ… ここは医局より暖房の効きがよろしいようですね。」

圭子の本が出版記念パーティー。
着付けをしてもらっている圭子。

「圭子さん そろそろお時間よ。」

「あとは帯を締めるだけですから。」

「帯は 着物の着こなしの要よ。

 いいわ。 あとは私が締めます。」

「んっ…。」

「大丈夫?まだ全然締めてないわよ。」

「ええ 平気です。」

「この帯は 代々 日向家の女が締めてきた伝統の品よ。

 伝統を守るには忍耐が必要なの。」

きつくしめられて思わず前に倒れてしまう圭子。

「圭子さんはお着物に慣れてないのね。

 あははははっ・・」

「お待たせ致しました。著者であります

 聖応育英会 副理事長日向圭子氏にご登壇頂きます。

 盛大な拍手を!」

その場には健吾もいました。

「看護師の 春日井が姉なんです。おめでたですか?
 
 あ… 8か月なんです。」

と言っていた姿を思い出す健吾。

招待客と話す圭子。
敏雄が健吾をみつけました。

「あなた どうかした?」

「係を呼ぼう。 不審な男がいる。」

「司馬先生?」

「知ってるのか?」

「姉さんの病院の先生よ。

 司馬先生。

 こんにちは。

 ご紹介させてください。私の主人です。」

「どうも。」

「先生 この子が あの時 おなかにいた子です。」

「抱かせて頂いて いいですか?」

「ええ もちろん。」

「いや 圭子。

 まだ首が座ったばっかりだから…。」

「大丈夫よ。」

その様子をみている姑。

「どうかしたのか?」

「ん? ああ…なんでもありませんわ。」

「名前は慶といいます。」

「慶君…。」

『男の子だ…。』

「日向さん この赤ちゃんは やはり…。」

「司馬先生。

 せっかくいらして頂いたんですから

 あちらで 何か召し上がってください。」

とつれていく優佳。

「あの子は… あの日 亡くなった女性の子ですね?」

「いいえ。 慶は確かに 圭子と敏雄さんの子です。」

「妹さんは 妊娠以前に子宮を摘出しています。

 子供が産めるはずがありません!」

「慶は 代理出産で産まれたんです。」

「代理出産?」

「出産は代理母が行いましたが

 遺伝子は圭子と敏雄さんのものを受け継いでいます。」

「どうして…なんで そんな事を…!?」

「それしか方法がなかったからです。

 それがなんだっておっしゃるんですか?」

「開き直らないでください!

 国内での代理出産は 原則禁止のはずです!」

「法律 倫理 道徳。

 そんな議論に付き合っていたら 

 今頃 妹は死んでいました。」

「でも あの人は死なずに済んだかもしれない!」

「三恵さんが亡くなったのは不幸な事故でした。」

「三恵さん?」

「有馬三恵さん。

 妹の境遇に同情して 

 代理母を引き受けてくれた 妹の幼稚園の先生です。」

「彼女のご遺体はどうしたんですか?」

「身寄りがないので私が 郷里のお寺に埋葬しました。」

「岡先生が辞めたのも僕を大学に戻したのも

 非難を恐れて全て隠ぺいするためですね!?」

「妹夫婦は聖職者ですから。」

「師長…。

 僕は あなたの事をずっと信頼してきました。

 まさか あなたが 僕をだましていたなんて!」

「司馬先生。

 あなたは優秀な医者です。

 1年足らずでしたが 

 一緒に仕事が出来て光栄でした。

 もう二度とお会いする事もありませんが。

 慶林大学でいい医者になってください。

 司馬先生。」


「いい医者ってなんですか?師長…。

 病院の不都合には目をつぶる

 都合のいい医者って事ですか?師長…。

 師長!」


「あの子は日向家の子供として

 大切に育てますのでご安心ください。

 あの子は選ばれた子供です。

 何不自由ない 誰もがうらやむ人生が

 約束されているんです。

 幸せに満ちた人生が。」


優佳は戻っていきました。

幼稚園にやってきた健吾。

「三恵先生は 型破りなところはありましたけど

 子供たちを心から愛してる人でした。

 みんなにも慕われて。」

「三恵さんの出身は?」

「千葉県の銚子です。

 生まれ故郷に帰るって言って 辞めたんですけども

 帰ってないみたいですね。」

「園長先生 遊ぼう!」

「はい。

 この間も郷里の方が こちらを訪ねていらしたんですよ。」

「ご友人でしょうか?」

「ええ。

 あっ この連絡先を置いていかれました。

 三恵さんの行方の手がかりがあったら

 すぐに連絡が欲しいって…。」

銚子市中央市役所 生涯学習部 学務課 本間 篤志

銚子へいった健吾。

「すいません。やくおう院って どこですか?」

「あっちだよ。」

三恵の墓に手を会わせます。

「ああ… ありがとうございます。」

「ご連絡頂いた司馬さんですか?」

「本間さんですね。」

「僕のせいだ…。

 三恵…。

 三恵…。」

「不倫?」

「三恵とは 3年前 私が学務科で

 市内の幼稚園の担当をしてる時に出会いました。」

回想。

「あの…。役所の本間篤志です。園の視察で…。」

「三恵先生 みーっけ!」

「見つかっちゃった。」

「じゃあ 一緒に遊びましょう。篤志先生。」

「いえ 僕は先生じゃないですしただ視察で…。」

「子供たちと一緒に遊ばないと何もわかりませんよ。

 はい 行こう!じゃあ 分裂して!」

回想おわり。

「子供も出来ず 妻との関係も

 うまくいってなかった事もあって 

 すぐに三恵に惹かれました。」

回想。

「私 篤志と一緒にいられるだけで幸せだよ。

 ずっと一人ぼっちだったから。」


「でも 小さい町ですから町中の噂になって…。

 妻に詰め寄られて…。

 三恵は この町を出ました。

 でも 去年急に連絡が取れなくなって…。」

「そうだったんですか。」

「妻と離婚した事 早く伝えたかったのに…。

 三恵に何があったんです?」

「三恵さんは 深夜に病院に運ばれて 僕が手術しました。

 ですが 残念ながら…。

 執刀医として どうしても お詫びがしたくて。

 僕が もっとちゃんと捜していれば…。」

「いつも事故には気をつけろって言ってたんです。」

「どういう事ですか?」

「三恵は 輸血が間に合わなくて 死んだんでしょ?」

「輸血?」

「ご存じかと思ってました。

 三恵は 珍しい血液型なんです。」


「珍しい血液型…?」

回想

「O型プラス繋ぎます。」

「なんでだ!」

「血圧39!」

「出血量が増えています。」「出血量 1000超えてます!」

「輸血全開!」


『果てしない欲望は

 人を怪物に変える。』


平井と瑤子。

「ふーん。お前ら 別れたんだ…。」

「だから こそこそ健吾に会ったり

 私をだしにして 情報を引き出そうとしても無駄だから。」

「自分が身を引いた事で

 愛する健吾ちゃん守ったつもりかもしれないけど

 俺 ますます燃えるな。」

「食いものにするのは私一人で十分でしょ…。」

「聞こえるよ 金の音が。」


『金が人を歪ませる』

酒をつぐ院長。

「いずれ大久保さんのところが系列一になりますな。」

「全て 塩野教授と日向さんのおかげです。」

「あなたにも世話になりました。」

「日向さん。 閉鎖中の産婦人科の再開のために

 ぜひとも 追加でご融資をお願いしたいのですが。

 絶対に損はさせません!」

「今までの従順なあなたより

 今の野心的なあなたの方が 投資対象としては有望ですね。」

「恐縮です。」

『欲望が人を歪ませる』

圭子のところへやってきた姑。

「何なさるんですか お義母様!」

「この子はしばらく本家で預かります。」

「え…?」

「あの本 じっくり読ませて頂いたわ。

 あんな子育て方針の方に

 日向家の跡取りは任せられません。」

「この子は 私の子です。

 私のやり方で立派な跡取りにしますから。」

「日向家の伝統に育まれてこそ

 この子は正当な跡取りになれるのよ。

 そのずうずうしい口ぶり…。

 お里が知れるわ。」

「な… な… 何!?」

無理やり赤ちゃんをうばい返す圭子。

「鍵を返してください。

 私と この子の家に 

 勝手に出入りしないでください!」

『愛が人を歪ませる』

病院へ走ってきた健吾。

『歪んだ怪物たちは

 真っすぐなものを もろいと侮る。

 でも 心のどこかで 

 その真っすぐさを恐れているのだ。』


「師長!」




健吾や糸川がいつ消されるかと
ハラハラしていましたが
モノローグだと悪事は暴かれるのかな。
消すなら平井でお願いします。

いくら正義感の強いまっすぐな健吾でも
代理出産までなら見逃したと思う。
圭子が本当に赤ちゃんを大事に思っている姿を
みていたし(たとえ中身がクッションであろうとも)
そのときの圭子から大事なものをもらったし。
あのままだと精神的に圭子がおかしくなっていたと
いうのもあるし、このまま自分が見ぬふりをすれば
お金持ちの息子として恵まれた人生が用意されていて
自分が騒ぎたてたところで、三恵もいない今
幸せになる人がいない・・とたぶん感じるはず。

でも三恵の死が仕組まれたものだと知ったら
そりゃあ黙ってはいられないでしょうねえ。
健吾一人が騒ぎたてても抹殺されそうだけど
ここはこういうことに慣れていそうな平井が役に立つか。
(その前にこいつこそ消される?)
嫁姑の仲に亀裂が入った姑が、赤ん坊の母親が圭子でない
ことに気づいてそこからせめてくるか、
せっかく前妻をひっぱたいて味方してくれた姑に
逆らっちゃいかんよ、圭子・・。
あんな伝統伝統言ってる家に嫁にいく時点で
ある程度従わなきゃいけないことくらい
わかってそうなものなのに。
嫁姑戦争コワイ。

特殊な血液型が赤ちゃんにも受け継がれていたら
あっというまにバレそうです。
いまいちずさんな計画だったな。

身をひいた瑤子は
けっこういい子だったのね・・。




司馬健吾  岡田将生 
春日井優佳 中谷美紀
日向圭子  加藤あい
日向敏雄  長谷川博己
平井瑤子  大政絢
有馬三恵  鈴木杏
糸川要次郎 渡辺いっけい
水原良二  勝村政信
司馬宗吾  平田 満 
大久保志郎 小日向文世








2012.02.24 Friday 17:47 | comments(0) | trackbacks(0) | 
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