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とんび 第5話「さらば愛しき人」

第5話「さらば愛しき人」



坂本さんの家にいった旭。

『俺の 秘すれば花は

見事に散った。

だけどここで うなだれてたら…』


その坂本さんの家をたずねてきたのは
元夫とかではなくクレームをつけにきた
保育園の保護者でした。

「林田さんどうなさったんですか?」

「今日 健介くんが

 ウチの息子を殴ったというのはご存じですよね?」

「健介 そうなの?
 
 存じ上げず すみませんでした。

 ちゃんと言って聞かせますので

 それで おケガのほうは?」

そこに旭も到着して会話を盗み聞き。

「私は問題は殴ったということではないと思っています。」

「と おっしゃいますと?」

「健介くんを送り迎えしている男性とは

  どのようなご関係なんですか?

 息子が健介くんに 「彼はお父さんなのか」と聞いたところ

 健介くんが 「違う」と答えたというのが発端のようでして

 聞くところによると 内縁関係の男性だそうじゃないですか

 そういう ふしだらな関係を 保育園に持ち込むのは

 少々 非常識じゃないですか」

『あのときと同じだ。

 自分の浅はかな行動が

 周りの人を傷つけてしまっている』


父が土下座している姿を思い出す旭。

「彼は会社の後輩で

 親切でやっていてくれたことなんです

 悪いのは甘えてしまっていた私です

 その点は反省しまして 以後 お願いしないと

 今日 彼にも伝えましたので」

「どうですかねえ」

『だけど もう俺は

 親の隣でうなだれてていい子供じゃない』


声をかける旭。

「坂本さん」

「えッ 何で?」

クレーム相手にお辞儀をする旭。

『そうだろう? 親父』

昭和64年1月。
昭和天皇崩御。

海雲和尚は体調が悪そう。

平成元年 4月

旭は高校生で野球部。
後輩が練習中にむだなおしゃべりをしていて
それが気になる旭。

入院中の海雲の見舞いにきたヤスですが
ケンカしてさっさと帰って行きました。

「」ヤスさん もう帰んの?」

「ああ!息子でもねえのに顔出してやってんのによ

 急に お前のバカ面には飽きただの言い出しやがってよ」

「ごめんね ワガママで」

「おい ホントの息子どうしてんだい!」

「お父さんの分の仕事もやってるから」

「息子がビシッとしねえからワガママになんだろうが

 ちゃんと言っとけ!」

でも海雲がそうしたのはヤスにしんどいところを
みせたくなかったからのようで幸恵が病室にはいると
海雲が苦しそうにしているところでした。

「 お義父さん!

 ヤスさんに言えばいいのに」

「あのバカに言ったら 毎日 毎日

 仕事ほっぽり出して 来るだろうが」

「強がりにもほどがありますよ」

帰宅したヤス。

晩飯はというとカップ麺。

「野菜食わねえとたえ子おばちゃんに叱られんぞ

 パパッとサラダ作ってやるから」

「いい いらない」

旭も機嫌悪い・・。

テレビ画面から目をはなさない旭。

「おい てめえはテレビと話してんのかよ!」

「何?」

ようやくヤスの顔をみました。

「和尚んとこ

今週あたり顔出してやってくんねえか?

 お前行きゃ喜ぶと思うしよ」

「分かった」

また海雲のところにきたヤス。

「まったく 息子ってのはあんなもんなのかよ 和尚

 話しかけてもろくに返事もしやがらねえし

 帰ってくんのも遅えしよ

  グレ始めてんじゃねえだろうな」

「お前と旭を一緒にするな」

「けどよ…」

「安心しろ

 バカでクズのお前が

 一つだけ自信を持っていいことがある

 それは…

 お前が最高の父親だってことだ」


「和尚…」

「お前は息子にとって最高の反面教師だ

 お前の背中を見とったら

 旭が道を間違えることなどありえんのだ」


「背面教師なあ

 親の背中が語るってやつだな」


反面教師っていったのにw

「バカだなあ お前は

 まあいい それより旭の野球はどうだ?」

「聞いても 「別に」

 「普通」しか言いやがんねえよ」

「そうか 頑張っとんだなあ」

「 おい おい 大丈夫か? じじい

  おい! じじい!

 これか? これだな!

  おい なんか痛がってんだよ

 早く医者よこせ!

 おい 何とか言えよッ おい!」

一生懸命ナースコールをおしました。

「バカだな お前は」

「おい!」

照雲と廊下で話すヤス。

「ガン?」

「もうリンパに転移しちゃっててさ

 今年の夏は越せないだろうって」

「じじい それ知ってんのかよ?」

「隠してたんだけどねえ」

「なんか軽くねえか? お前」

「そお?」

「親父死ぬって そんなもん なの?」

「いい人生だったと思うんだよ

 親父は

 やりたい放題でも ヤクシンさんのお上人様って慕われてさ

 それこそ これ以上 望んだら罰が当たるっていうかさ

 年も年だし」

「いくつだっけ? 和尚」

「74」

「そっか…」

「だから まあね

 実は ヤスに相談があってさ」

「おう」

「とにかく 痛みがすごくて

 眠りたくても眠れないような感じでさ

 最後の最後は 薬で楽にしてやろうと思ってんだ」

「薬って?」

「薬で意識を失わせて分からないうちに

 逝かせてあげようって母さんとも言ってて」

「意識をなくす…」

「で その薬を打つ時期をさ

 ヤスも一緒に決めてほしいんだよ」

「何だよ それ

  ヤダよ 勘弁してくれよ」

「ヤスは息子も同然なんだから」

「勝手に息子にすんじゃねえよ!」

「それから 一回でいいから意識があるうちに旭

 連れてきてくれると

 多分 会いたがってるからさ」

その旭は部活に没頭中。

「お願いします」

「センスいいよなあ 山本 1年のくせに」

旭に話すヤス。

「和尚が?」

「もう長くないらしいんだよ

 だからよ早めに見舞い行ってくれよ」

「今は 部活休めないんだよ

 もうすぐレギュラー決める最終テストでさ」

「練習終わってからなら行けんだろ」

「終わってからじゃ面会 間に合わないよ」

「早引けでもいいし 朝にちょっと顔出す手もあんだろ」

「朝練も毎日あんだよ」

「別に 1日くらいいいだろうが」

「とにかく 今は休みたくないんだよ」

「お前 和尚にはかわいがってもらったろうが」

「別に 行かないとは言ってないだろ

 ちょっと待ってくれって…」

「いつ会えなくなるかしれねえんだぞ」

「今休んだら 俺は終わりなんだよ」

「お前には来年もあんだろうがッ」

「来年は…

 多分 ないんだよ」

「ああ?」

「とにかく俺には今年しかないんだよ」

「球追っかけて 見舞いの一つも行けねえなんて

 そんな理屈があるか!」

ちゃぶ台をたたくヤス。

「あのさ

 見舞い行くほうが気使うんじゃないの?

 起きてんのもキツイんだろ」

「しんどきゃ起きねえよ」

「じゃあ 行っても行かなくても同じじゃない」

部屋からでていってしまいました。
ヤスの視線は妻の遺影に・・。

外で素振りをする旭。

ヤスの職場。

「どいつも こいつも

 言うこと聞かねえでよッ」

機嫌も悪い。

ガソリンスタンドには葛原嫁。
ポスターを渡してくれました。

「事務所 貼ってあったんだよ

 バカ 早く隠せよ」

「浅野ゆう子」

「ヤクシンのじじい 前に好きだって言ってたからさ」

「クズの嫁でも こうなのによ…」

「はあ?」

「旭がよ

 何だかんだ 見舞いに行きやがらねえんだよ」

「そんなもん しょっぴいて行きゃいいじゃねえかよ」

海雲は苦しそう。

野球部の練習をみにいった旭。

「カッコイイねえ 俺の息子は」

「ありがとうございました」

「おい 旭!」

旭は後輩を集めていました。

「お前ら こっち来い

 そこ ケツ出して並べ」

後輩にケツバット。

「おい!何やってんだ! 旭」

「何来てんだよバットだぞ そんなやり方あるか」

「関係ないだろ」

「じゃかあしゃ!」

旭をひっぱっていくヤス。

「何すんだよ 離せよ!

 勝手に来んなよ 何考えてんだよ」

「いつも やってんのか?1年だろ あれ」

「たるんでたからだよ」

「たるんでたらいいのか?」

「そういう伝統なんだよ 俺だって1年のころはやられてた」

「気合いを入れんのはいいけどよ

 バットで叩くことねえじゃねえか

 ケガさせたら元も子もねえだろうが」

「しかたないだろ」

「しかたなくねえだろ

 こんな伝統やめろって言えばいいじゃねえか」

「今 そんなこと言える立場じゃないんだよ」

「ああ?」

「そんなこと言ったら

 俺 ケツ叩かれた分大損だっつってんの!」

「もういっぺん言ってみろ」

「みんな やられてんだからやられたヤツは大損だって…」

ヤス、旭をぶちました。

「何すんだよッ」

「情けねえだろうが! 旭

 情けねえだろ! ああ!?」

旭、行ってしまいました。
残されたヤスが本当につらそう。

病院にいって和尚の横に寝るヤス。

「まあ そういうわけでよ

 今日 明日に連れてくんのは無理かもしんねえ」

「このへんで よさそう?」

「おう」

照雲が天井にポスターをはっていて
その場所をチェックしていただけでした。

「これから 母さんと交代するからさ

  「夕なぎ」でも行かない?」

「 3日目の風船みてえなツラしやがって

 そんなヤツと飲みたかねえよ帰って寝てろよ」

「あッ ヤスいつもいつも ありがとね」

「どうってこたあねえよおばちゃん」

「お父さんを そろそろね

 楽にしてあげようかと思ってるの

 いいよね ヤス
 
 お父さん もう 十分 頑張ったよね」

立ちあがって照雲にたずねるヤス。

「旭 いいのかよ?」

「多分さ 北高の野球部で 

レギュラー守んのは大変なんだよ

 たかが半日 抜けることが
 
 今の旭にとっては 命取りに感じちゃうんじゃないかな

 後悔しなくていいと思うよ

 親に殴られんのも 子供の権利だからさ

 俺らも よく殴られただろ?

 ゲンコで」

「そうだけどな」

旭は部活で素振り中。

たえこの店で飲むヤス。

「あんたが悪い!」

「何で俺が悪いんだよ」

「お前は 酒飲んでグチグチ言えるけど

  旭は酒飲めねえだろうがよ」

「ジュース飲んで 公園でグチりゃいいじゃねえか」

「あの あっくんが親に殴られたなんて話

 友達に言えると思う?」

「気取り屋だからよ

  腹割って話せるダチもいねえんだろう」

「どこまでバカなのよッ

 あの子は あんたの暴力を

 言いふらすことなんかしないって言ってんの」

「あそこで殴らなかったら親じゃねえだろッ」

お酒もつまみもひきあげてしまうたえ子。

「あッ おい…」

「お金はいいから 今日は帰んなさい
 
 そのお金で あっくんにお肉でも買ってやんなさい」

「ガキじゃあるめえし甘やかしすぎだろッ」

「子供にベタベタ

甘えさせてやれないような親は

 親じゃない!」


言われたように肉を買って
トンカツの下ごしらえをしていると
電話がかかってきました・

「はいはい…

 はい 市川でございます」

「私 同じ野球部の1年の山本卓弥の母でございます」

「はあ」

「実は息子が おたくの息子さんにバットで殴られたそうで

 先ほど 病院で治療を受けました」

「すいません! おケガのほうは?すぐ お詫びに…」

「この件は主人と相談して筋を通してもらいますから」

「あの…」

電話が切れました。

そこへ旭が帰宅。

「何?」

「謝りになんか行かなくていいよ

 ギャーギャー言ってもアザだけだよ

 そんなことで謝ってたらほかのヤツらに示しつかないよ」

「俺だって ケツバットされて座れなかったことあるけどさ

 言ったら親父 抗議の電話かけた?

 かけないだろ?

 叩かれるようなことしたお前も悪いって言うだろ

 その程度のことで騒ぐほうがどうかしてんだよ

  ウチは そういう野球部なんだから

 それがやなら辞めればいいんだよ」

「分かった

 あの子も野球部の一員だったら

 それは承知してんのかもしんねえ

 けどな 親は子供がケガしたらつらいんだよ

 せめて 山本くんのお母さんには

 謝るべきなんじゃねえのか?」

「じゃあ これは?」

頬にはヤスになぐられたアザ。

「これ見て 親父つらいの?

 どうやって 親父がつらがんの?」

「俺は… 謝んねえぞ」

「じゃあ 俺も謝る必要ないよな」

「お前 いつから そんな…

 いつから そんな男に…」

「育て方が悪かったんじゃないの?」

旭をみがえてたちあがりました。

「旭 痛えか?」

「決まってんだろ」

「そうか」

自分を殴りだすヤス。

「何やってんだよ バカじゃねえのか!」

「俺は謝んねえぞ!

  謝んねえけど…

 ちくしょう!

 痛えぞ!

 旭 痛えぞ!」

「分かったから!分かったから やめろ!

 やめてくれよ!」

そこへやってきた山本の父。

「あの…1年の山本卓弥の父親です」

「ああ 今日は どうも

ウチの息子がご迷惑をおかけしまして…」

「頭を下げるということは

 息子さんの罪を認められたというわけですね」

「罪?」

「じゃあ 息子さんに 野球部を辞めていただけますか?」

「えッ?」

「ウチの息子はおたくの息子さんを怖がって

 野球部を辞めると言ってます 

 こんなバカな話はありませんよ

 そちらが辞めるのが筋というもんでしょう」

「ああ… えッ?」

「おい 君 悪いが 今から退部届を書いてくれ

 それがないと仕返しが怖くて

 息子は眠れないと言ってるんだ」

「そんな俺 仕返しなんて…」

「すいません

 よく言って聞かせますから

 こいつも一生懸命やっておりますんで…」

「本来なら 慰謝料取ってもおかしくない話なんですよ

 退部ぐらい安いもんでしょう

 女房は 警察に訴えるとまで言ってますから」

「いや そりゃあ 大げさなんじゃ…」

「そういう態度なら こちらは出るとこ出てもいいんですよ」

「すいませんでした すいませんでした ホントに

  すいません!」

と土下座する旭。

「私は謝ってくれなんてひと言も言ってないよ

 早く退部届を書いてくれと言ってるんだ」

「すいませんでした もう二度としませんから」

「明日はレギュラーを決めるテストの日らしいね

 君は 自分がレギュラーに残るために

 ウチの息子を傷めつけたんじゃないか」

「そんな 俺は…」

「とにかく すぐに退部届を書きなさい」

「部屋 戻っとれ 旭

 部屋に戻ってテレビでも見とけ なッ

 あとは お父さんが何とかしてやるから」

「いつもそうやって甘やかされてるわけですか」

「もういっぺん言ってみろ ワリャ!」

「そうやって甘やかすから…」

「親が子供を甘やかさなかったら

 誰が甘やかすんじゃ ボケ!

 てめえはてめえのガキを甘やかす

 俺は 旭を甘やかす

 どこに文句があるんじゃ!

 そんな たいそうなガキだったらな

 二度とケガせんように

 箱の中で野球させとけや!」


「あなたは親の責任を何だと思ってるんだ!」

「責任?」

鼻につめてあった鼻血のついたティッシュを
さしだすヤスにびびる山本父。

「責任より

 愛のほうが大事だろうが」


「何なんですかッ」

「不出来な親で 息子も困っとるんです

 困ってますから 今後 俺が二度と

 人前に出なくてもいいように

 もう後輩をシメるようなことはしないと思います

 何とか それを信じてやってくれませんかね?

 じゃ 近所にも迷惑ですし

 ここらで 一本締めで」

「話は まだ…」

「いよ〜お!」

ポンと手をたたきました。

「以上!

 はい おやすみ。」

と無理やり外へおしだしました。

「まあ これでどうかしてる親で

 息子もかわいそうにって同情してくれんだろ」

そしてひっくりかえしたちゃぶ台をかたづけはじめました。

「ひでえな おい

 よいしょ

 ああ〜あ 何だよ これはよ」

天井のポスターをみつめる和尚。

「バカどもが…」

学校で後輩をよびとめる旭。

「山本

  昨日は 悪かった」

旭、頭を下げました。

ヤスの職場。

「ヤスさん! さっき電話があって

 ヤクシンの和尚さんが危ないって」

車をとばすヤス。
旭は部活中。

「旭ー!旭…」

「何でもねえ

 頑張れよ!」

と戻っていきました。

「和尚…」

「次 市川!」

でも自分の番。

病院にやってきたヤス。

「じじいは!?

  じじい! 大丈夫か!?

 おい じじい!

 あ あいつは…あいつ 何してんだ!

 朝から ずっと お勤めしてる」

「はあ!?」

「今ごろは護摩でもたいてると思う」

「バカか あいつは

 間に合わなかったらどうすんだよッ」

「それも縁だからって言ってた」

「是諸法空相 不生不滅不垢不浄 不増不減 是故空中」

「坊主がすましたこと言いやがって

 親の死に目だろうが」

「いいんだよ ヤス

 それが お父さんの本懐なんだから

 心の底で望んでることなんだから

 それが 嬉しいの」

「分かんねえなあ 俺には」

「ヤス どうしたの? その顔」

「いや 旭と色々あってよ

 自分で殴ったんだよ」

「ヤス その話

 お父さんにしてあげて」

「こんなときするような話じゃねえよ」

「してあげてよ」

野球部ではレギュラーの発表。

「旭がよ

 くそ生意気に俺のあごあし取るわけよ」

「揚げ足のこと?」

「とにかくよ 俺が殴ったのを

 俺が痛がるのはおかしいだろって言いやがってよ

 謝るわけにもいかねえから

 てめえで てめえのこと殴って痛がるしかなくてよお」

そこへやってきた照雲。

「ごめん 遅くなって」

「お前 何だ その鼻」

「護摩で焼けちゃったみたいで」

旭は病院にむかって走っていました。

部屋にもどってきた母と照雲。

「先生 何て?」

「これ以上の延命を望みますかって」

「ヤス

  旭 来るかな?」

「今日は レギュラーのテストとかでよ

 すまん」

「いいんだ いいんだ

 縁がなかったってことだ」

そこへ旭がやってきました。

「旭…」

「和尚

 俺 レギュラー取ったよ

 今度は

 俺が甲子園 目指すから」


野球のボールを和尚の手にもたせる旭。

「旭 もう手はな…」

でもボールをにぎろうとする和尚。
旭は笑顔に。

「よかったな 親父

 よかったな」

意識がほとんどないのに
つぶやく和尚。

「あ… り… が…と…う…」

うっすら目もあけました。

廊下に出たヤスと旭。

「もっと早く来ればよかった」

「お前も ナマグサも

 てめえのことばっかでよ

 けど それが じじいの

 本懐とかいうやつだったんだから

 まあ いいんじゃねえか

 俺にも なんかあったのかなあ

 まッ ねえわな俺に期待することなんて」

「でも 和尚ありがとうって言ってたよね」

「ありゃ お前に言ったんだろ」

「いや ヤスって言ってたよ」

「言ってねえよ あッ」

「何?」

「浅野ゆう子のポスター

 もしかして あれのこと…」

「違うと思うけど」と笑う旭。

幸恵がよびにきました。

「ヤスさん

 お別れしてあげて」

「これ…

 ヤスにだって」

手紙をわたされました。

「じじい

 最後まで説教かよ」

「ヤスへ

 どうやら わしは そろそろ

 お役御免になるようだ。

 お前ごときに このわしが

 筆を持つ労をとらねばならないのは

 何とも腹立たしいが

 お前は バカだから

 口で言ったところで

忘れてしまうかもしれん。

 よって ここに記すことにする。」


「さっさと本題に入れよ」

「お前のことを考えると

 浮かぶのは げんこつだ。

 本当に お前のことはよく殴った。

 いや 殴ることを余儀なくされた

 わしが この世で一番 殴った人間は

 おそらく お前じゃないかと思う。

 親でもないのに

 何とも ご苦労なことだと

 わしは 自分で自分の徳の高さに

 恐れ入るばかりだ。」


「何が言いてえんだよ」

「そんな お前に

 礼を言う日が来るなど

 思ってもみなかった。

 お前に

 旭のことを相談されるのは

 わしの楽しみだった。

 バカな お前が何かあるたびに つまずき

 間違いを繰り返しながら

 バカなりに努力を重ねる姿を見るのが

 わしは好きだった。

 そのたびに成長していく旭の姿を見るのが

 楽しかった。

 そこに関われることが

 わしの喜びだった。

 わしが お前に望むことは

 一つだけだ。

 バカでもいい

 間違ってもいい

 殴ったっていい

 お前のことだ

 旭に嫌われるかもしれない

 だけど お前は お前なりに

 親であろうとし続けろ。

 そして いつか

 わしが お前と旭を見て味わった思いを

 味わってほしいと思う。

 曽根崎海雲」

手紙をにぎりしめているヤス。

『親父のげんこつは震えていた。

思いを握りしめて

 言い尽くせないような

 思いを握りしめて

 向かうべきところへ』


そして和尚は亡くなってしまいました。
ヤスが拳をにぎりしめいていたように
旭も・・。

現在

自分を殴る旭。

「市川くん!」

「何してんだ! 君は」

「悪いのは 僕なんです

  僕が いいかげんな態度だったから

 坂本さんが説明したことは本当です

 もう来なくていいと言われました

 でも 僕としては

 できれば…

 健介くんの父親になりたいと思っています」


「えッ?」

「今日は それをちゃんと言いに来ました

 息子さんを混乱させてしまって

 申し訳ありませんでした!」

頭をさげる旭。

「結局…そういうことなんじゃないか

 ふしだらな」

坂本さんが反論。

「ふしだらのどこが悪いんですか?

 だって 林田さんだってふしだらですよね

 でなきゃ お子さんは生まれないですもんね」

「どういう神経してるんだ 子供の前で」

「すみません

 どうも私は 常識に外れたところがあるようで

 未熟者ゆえ

  以後 何とぞご指導いただければと存じます」

笑顔で頭を下げる坂本さんにならんで
自分も頭をさげる旭。

林田さんは帰って行きました。

「あの…

 さっきの お芝居だよね?」

「もう一回 言いましょうか?

 僕は」

そのときドアがあきました。

「イテッ」

「はい これ」

タオルをさしだしてくれた健介。
そのタオルが自分がふりまわしたせいで
母がなくなってしまったタオルと重なりました。

『あの日俺が壊してしまったものを

親父から奪ってしまったものを

 もう一度 見せてやろう』


「ありがとう 健介」

『待ってろよ 親父』




はあ〜今回も泣けた・・。
ヤスが不器用ながらゆっくりしっかり
親になっていく姿が素晴らしい。
それは身近に和尚やたえ子や
導いてくれる人がいたから・・。

和尚の存在は本当に大きかったです。
手紙には号泣。

ヤスってもう亡くなってるのかと思いこんでたけど
まだ健在なのかな?
ヤスも旭に子育てに相談される日が
きたりするのかな?
旭が遠慮して身をひいちゃうんじゃないかと思ったけど
あそこでしっかり気持ちを伝えられる男だったのは
ヤスに育てられたからこそだなあ。





市川安男…内野聖陽
市川旭…佐藤健
坂本由美…吹石一恵
幸恵ゆきえ…加藤貴子
市川美佐子…常盤貴子
照雲…野村宏伸
たえ子…麻生祐未
海雲…柄本明











2013.02.11 Monday 10:39 | comments(2) | trackbacks(4) | 
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あんじー (2013/02/11 12:11 PM)
honey さん、こんにちは。

ふだん人情話は避けていますが、昼間の番宣ダイジェスト を見てしまい w…
なのに子供のジャマが入り落ち着いて見られず。
和尚の手紙を今、読んで号泣したところですw
幼い旭の悲しみ。どうにもできないヤスの痛み。
雪の中のシーンの 和尚の説得力には参りましたわ。
いつ見ても気持ち良く泣けそうなドラマですね~。
honey (2013/02/11 6:21 PM)
あんじーさん、こんばんは。

毎回うるうるしています。
お涙ちょうだいじゃなくて
ドラマがちゃんとしっかりできているから
自然に泣けますよね。









【とんび】第5話 感想
あのときと同じだ。 自分の浅はかな行動が、周りの人を傷つけてしまっている。 だけど、もう俺は…親の隣でうなだれてていい子供じゃない。 とんび 第5話    昭和64年…を1週間しか送らずに...
| ドラマ@見取り八段・実0段 | 2013/02/11 12:23 PM |
とんび #05
『さらば愛しき人』
| ぐ〜たらにっき | 2013/02/11 12:43 PM |
ドラマ「とんび」 第5話 あらすじ感想「...
大切な人の死------------!!今回もまたベタな展開ではあるんだけど、泣かされたなぁ。和尚の優しい想い。ヤスの一生懸命なお父さんの姿。昭和の終わり。海雲和尚が入院。末期のガンで...
| ◆◇黒衣の貴婦人の徒然日記◇◆ | 2013/02/11 7:36 PM |
とんび 第5話:さらば愛しき人
海雲和尚・・・合掌(ノω・、) ウゥ・・・ ヤスさんに当てた手紙、バカバカ言いつつ、和尚らしいユーモアと愛情あふれる内容だった… 幼い頃から、本当の子どものようにヤスさんを見守り、そしてまたアキラを孫として 愛してくれた。 親を知らずに育ったヤスさんは、子
| あるがまま・・・ | 2013/02/11 8:41 PM |