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とんび 第6話「父と息子の最期」

第6話「父と息子の最期」



平成2年、冬。大学受験を控えたアキラ(佐藤健)は
東京の早稲田大学を受験したいとヤス(内野聖陽)に相談する。
自分の息子が早稲田を受けると自慢するヤスだったが、
東京に行ったら戻って来ないのではないかという
葛原(音尾琢真)の言葉にショックを受け酒を飲み歩き、
アキラに「行きたければ家出でもして勝手に行け!」と
暴言を吐いてしまう。翌朝、家にアキラの姿はなかったー。




旭のぶんもコンビニでお弁当を買う坂本さんは
同僚にひやかされますが戻ってきたら
旭はいない。

「何で そんなに隠すんだよ」

「バレバレよ」

「それが職場というもんだからです」

「かったいな〜自慢して歩けばいいじゃない」

「こないだ初めて2人で歩いたんだけどさ

 こう…視線が寄ってくるのよ

 それが 100パー私をすり抜けてくのが分かるわけ

 落ち込むよ〜 わりと」

「そういうもんなんですかね」

「私でいいのかなあっくんはさ」

「若干 マザコン入ってんじゃない?

  お母さん 早くに亡くしたみたいだし

 お父さんもね あれみたいだから」

「そういえば何もやってあげてないな」

「えッ?」

「おウチっぽいこと」

旭は外でカレー屋さんの列の長さをみて
あきらめたところ。

『東京にはありとあらゆるカレーがある

 インドカレー

 タイカレー  ソバ屋のカレーに牛丼屋のカレー

 東京はカレーパラダイスだ

 だけど…
 
 こんなとき ふと気づく』


カレーパンを食べる旭。

『俺は一番好きなカレーを

 東京に来てから一度も

食べられていないことに』


「俺よ 二日目のカレーが

 この世で一番好きかもしんねえわ」

といっていたヤス。

『親父は あのカレーを…

ちゃんと 食べたんだろうか?

グリンピースの のった

我が家の朝カレー

 どうだったのかな?

親父』


平成2年
旭は受験生。

たえ子の店でのみながら
旭自慢をするヤス。

「何だよ 旭 地元の国立行くのか」

「東京やら大阪のすっげえ大学行っても

 遊んでばっかだっていうじゃねえか

 旭は親のいる家からちゃんと大学通うんだ」

「えッ こっから通うの!?」

「俺も そう言ったんだけどよ

 「大学まで たった1時間半だ」って言ってくれんのよ」

「でも 大学出てこっちで就職もな〜」

「カーッ これだから凡人の考えることは嫌だね

 学のいる仕事あんだろうが」

「坊主とか? ハハハ…」

「バカ! 弁護士だよ 弁護士」

「あっくん弁護士になるって言ってんの!?」

「ちゃんと聞いたわけじゃねえけど

 法学部ってったらそんな感じだろ」

「でも やっちゃん それ

 ちゃんと聞いた方がいいんじゃない」

「聞かなくても分かんだよ」

「あッ それ あれか!」

「そう

 このまま写せちゃうカメラ」

「カーッ 世の中どんどんインスタントになってくね」

ヤスがごきげんで帰宅すると
旭が待っていました。

「 帰ったぞ〜」

「お帰り」

「何だよ… 珍しいな」

「ちょっと話があるんだけど」

「話?何だ?

 「コレが コレ」とか言うなよ」

小指をたてておなかがふくらむしぐさ。
=彼女が妊娠。

「いや…」

「じゃ 何だよ」

「俺 早稲田 受けてみたいんだ

 東京の

 早稲田大学を受験したいんです

 先生ももう少し頑張れば

 行けるんじゃないかって言ってくれてるし」

「ちゅうことは お前東京行くってことか」

「バイトもするし奨学金も当たってみるし

 お金は できるだけ迷惑かけないようにするから

 とりあえず受けさせてもらえないかな」

「 「もらえないかな」って お前…

  何か あんのか?

  どうしても早稲田に行きたいみたいな」

「まあ それは…

 知らない世界も見てみたいっていうか

 とにかく東京行きたいんだよお願いします」

たえ子の店でまたヤスが旭自慢。

「何だよ 旭地元の国立じゃなかったのかよ」

「早稲田だぞ バカヤロー

 早稲田っつったら お前都の西北だぞ

 あの吉永小百合も早稲田なんだぞ」

「男はビシっと地元じゃなかったの?」

「俺もそう思ってたけどよ考えたら

 このままだとアイツ「井の中の蛙」になっちまうだろ

 男としてそれもどうなのかなってな」

「寂しくないんすかヤスさん」

「寂しいことあるかよ たったの4年だろ」

「普通 東京出たら帰ってこないんじゃないすか」

その言葉にかたまるヤス。

「えッ!?えッ?」

「でもよ 最近はよ東京っつってもな」

「そうそう 新幹線でね すぐだし」

「何で 「帰ってこない」なんて言っちゃうのよ」

「だって 普通そのくらい考えるでしょ」

「そういうのをヤスのバカを見くびるってんだ」

「また一人暮らしか〜 ヤス」

「やっちゃんは高校の頃から一人暮らしだったし

 美佐子ちゃんと結婚してやっと二人になって

 あっくん出てったら またね」

受験勉強をがんばる旭。

何か匂いに気づきみにいくと
ヤスが鍋をかけたままでした。
そのヤスはお風呂でお湯をだしっぱなしで
眠りながら湯船に・・。

「親父 火!

 ねえ 親父お湯 出しっぱなし!」

「うん…」

「カレーも火かけっぱなしだったよ」

「ああ… 夜食作ってやろうと思ってよ」

「そんな気 使わなくていいから気をつけてよ マジで」

「「マジで」 「マジで」」

「はあ?」

「受かってもいねえのに 東京様の予行練習ですか」

「ホントに 気をつけてよ」

脱衣所にある父の靴下には穴が。

照雲に相談する旭。

「大丈夫なのかな?」

「大丈夫って?」

「親父 改めて見るとさ

 毎日毎日 夕方から飲んで
 
 ほっとくとつまみばっか食べてるし

 こないだなんか 寝煙草しててさ

 俺 出てってまともに生活できんのかな?」

「 「大丈夫じゃない」って言ったら 旭受けるのやめんの?」

たえ子の店では野菜を山盛りだされました。

「何だよ」

「食べないで飲むのは体に悪いのよ

 それ食べないと出入り禁止だから」

「客 選ぶような店かよ」

「ねえ やっちゃん

  あっくんの そばにいたいなら
 
 会社に転勤お願いしてみたら?

 ほら 萩本さんとか 今東京で偉くなってんでしょ

 頼んでみるとかさ」

「そんなこと できっかよ

 息子に くっついていきたいから転勤させてくれなんて

  言えるわけねえだろうが」

「でも あっくんに「行くな」とも言いたくないんでしょ」

「別に 俺はアイツがいなくなることなんて

 屁とも…」

「思ってるでしょ」

「思ってねえよ!

 別に死んじまうわけでもねえしさ

 ちょっと遠くに行くだけじゃねえか

 そんなもん寂しいわけあるかよ」

「やっちゃん!」

「もう一杯」

「本日の営業は終了しました」

追い出されたので屋台で飲むヤス。
そばにいたカップルの会話がきこえてきました。

「お待ち カラシはこれだから」

「は〜い」

「う〜わ マジ!?空き缶に 箸 刺さってんだけど」

「だから 言ってんじゃん 俺の田舎じゃ箸 使いまわしだって」

「うっそ!?」

「ねえ これ東京じゃマジないからねオジサン」

「どうも すいません」

そのお客にからむヤス。

「じゃあ 帰れよ」

「はあ?」

「文句あるなら東京帰れっつってんだよ!」

ヤス、警察につれていかれ
旭が迎えにいきました。

「お父さん 東京から来たカップルに

 ケンカふっかけたみたいなんだよね〜

 気持ちは分かるけど ケンカはケンカだからね」

「すいませんでした ホントにご迷惑おかけしまして」

家に戻ったふたり。

「いい年してケンカなんかしないでよ」

「ここの出のくせに ここんことバカにしやがるからよ」

「人の言うことにいちいち腹立てたらキリないよ

 はい

 大体 飲み過ぎなんだよ

 だから我慢がきかなくなんだよ」

旭がもってきてくれた水をぶっかけるヤス。

「うわっ!何すんだよ!」

「酔ってねえって言ってんだよ」

「どう見ても酔ってんだろ」

「うるせえ!

 お前 いつからそんな偉くなったんだよ

 いつから親に説教するほど偉くなったのか言ってみろ」

「説教なんかしてないよ」

「してんだろうが!」

「親父 悪酔いしてるよ」

「酔ってねえっつってんだろうが じゃ 何か

 お前は俺が四十何年ずっと悪酔いしてるって言うのか」

「とりあえず 今日はもう寝よう」

酔って絡む父。

「バカにすんじゃねえよ

 甘ったれが!」

「じゃ どうしたらいいんだよ」

「謝れ」

「謝るって 何を?」

「うるせえ!

 謝らねえんだったら受験なんかさせねえからな

 東京なんか 行かせねえからな」

「ええッ!? 何で…」

「質問ばっかすんじゃねえよ早く謝れ

  「親を小バカにしてすみませんでした」って

  そこ 手ついて謝れ!

 ガキが 一人で育ったような面しやがって

 冗談じゃねえぞ!

 早稲田 行けなくていいのかっつってんだよ」

ヤスの足が仏壇にぶつかって
美佐子の遺影がおちて
額が割れました。

「何だよ その目は!

  てめえが俺を怒らしたからだろうが!

 「金持ち喧嘩せず」ってやつか

 立派なもんだな田舎 捨てて

 早稲田に行こうなんてヤツは

 行きたきゃ勝手に行け

 そのかわり ビタ一文出さねえからな」

「本気じゃないよね?」

「好き勝手する息子に 何で

  これ以上スネかじらせなきゃいけねえんだ

 盗人に追い銭やるほど俺はお人よしじゃねえんだよ

 行きたきゃ行きゃいいじゃねえか

 家出でも何でもしてよ

 そんな根性もねえくせに何が東京だ

 笑わせんな 受験の金なんて飲み干してやる」

翌朝。

「旭 あけるぞ」

部屋に旭の姿はなし。

「ホントに 家出しやがった」

会社にいって学校に電話して
たしかめるヤス。

「そうですか 学校には行ってますか

 朝 「具合が悪い」なんて言ってたもんで

 はい どうも〜」

帰りに買物にいくと
葛原嫁とグリーンピースのとりあいに。

「グリンピース グリンピース グリンピース」

「ああッ!?」

「ああッ!?」

「今日 ウチはカレーなんだよ」

「カレーにグリンピースいらねえだろうが

 ウチはチキンライスなんだよ」

「ウチじゃグリンピースのねえカレーは

 カレーじゃねえんだよ

 今日 カレー作んねえと

 ウチはカテーコーカイすんだよ!」

「オイ… 何かあったのかよ」

「旭の野郎…ゆうべから帰んなくてな

 アイツ カレー好きだからよ」

でもカレーをつくっても帰って来ない。

帰って来た気配がして
鏡に笑顔を練習すると
照雲でした。
あわててねそべるヤス。

「ヤス いる〜?

 旭 ウチ来てるから心配しないでね」

「あんなクソガキ 当分 置いといてくれ」

「えッ いいの? それ」

「ああ?」

「旭がさ 卒業するまでウチに置いてほしいって言うんだ」

「いや… でも お前

 そんなこと言ったって金やら何やらよ

 どうするつもりかって話だよな

 これだからガキってのはよ」

「お金はお年玉ためた分とかあるらしいし

 足りない分は貸してやろうって幸恵と言ってんだけど」

「ああ…じゃあ そうしてやってくれ

 ついでに学費も仕送りもしてやってくれ」

ヤス、いじっぱり。

会社でも旭のことをきかれると
殴り倒す。

「ヤスさん 旭君帰ってきたんすか?」

「うっせえんだよ」

「すいません」

グリーンピースを準備して待つヤス。
でも旭は帰らず。

受験勉強を続ける旭は
忘れ物をとりに家にいきますが
家の中はめちゃくちゃにちらかってました。

仕事中のヤス。

「ヤスさん 最近まともに食ってないんじゃないすか」

「うるせえ」

「俺が旭君呼びにいきましょっか」

「うるせえんだよ!」

殴ろうとした拳もとどかずそのまま
倒れてしまうヤス。

「ヤスさん!ヤスさん! ヤスさん!」

病院でヤスのそばで泣くたえ子。

かけつけた旭。

「親父は!?」

「栄養失調だって」

「栄養… 失調!?」

「今どき?」

「情けない!

 情けないったらありゃしないわよ!

 ごめんね あっくん

 注意して食べさせてたんだけど

  最近 店にも来なくてさ」

「いえ…」

「あの〜 どうして たえ子さんが謝ってんすか?」

「あっくん 最初は

  「二〜三日で帰る」って言ってたんだけどね

 私が余計なこと言ったのよ」

「余計なことって何すか?」

「 「せっかくだしもう少し長く家出してみて」

 「やっちゃんが一人でちゃんとできるか試したら」って

 私が悪いのよ

  やっちゃんのバカを甘く見てたのよ!」

「戻るよ 俺」

「あっくん… ごめんね ホントに」

「こちらこそ 何か振り回しちゃってすいませんでした。」

めざめたヤス。

「起きた?」

ごはんを出す旭。

「食べてよ 死んじゃうよ! マジで」

「マジ マジ うっせえんだよ」

「せっかくお母さんに助けてもらったのに

 栄養失調で死ぬ気かよ」


その言葉でようやく食事に手をつけるヤス。

家に戻ると部屋がきれいに片付いていて
旭も戻った形跡。
だけど早稲田の願書がゴミ箱に捨ててありました。

そこにやってきた照雲。

「何だよ お前かよ」

「ああ ごめんね 旭じゃなくて」

「そんなこと 言ってねえだろうが」

「ヤス 遊びにいかない?」

「ええ?」

海辺にきたふたり。

「こんな所で 今さらどうやって遊ぶっていうんだよ」

「旭 早稲田は?」

「知らねえ」

「そう」

「寒いな オイ 帰ろうぜ」

「寒かったよね〜 あんときも

 みんなで 旭の背中あっためたよね」

「そんなこともあったな」

ヤスの背中をポンとたたく照雲。

「なんだよ!?」

「カイロ?」

「便利なもんが増えたよね〜

 色んなことに手がかからなくなって

 その分 人の絆が薄まったって話もあるけど

 悪いことばっかりじゃないと思うよ」

「何言ってんだよ」

「カイロは長持ちするようになったし

 携帯電話なんてのもできたらしいし

 新幹線も そのうちもっと速くなる

 きっと 寒くないよ ヤス

 思うより大丈夫だよ

 俺も幸恵もいるし

 たえ子さんだって

 社長だっているんだから」


数珠を差し出す照雲。

「寂しさを恐れるな

 親だったら 自分の寂しさを

子供にのっけるな!

 もう18じゃない 旭も

 子供でいられる時間はあと少しでさ

 そのうち 会社や 

嫁さんや まわりの誰かのために

 笑ってなきゃいけなくなる日が

来るんだから

 だから せめてもうちょっとだけさ

  子供でいさせてやろうよ

 ねッ」


亡き和尚 海雲の言葉を思い出すヤス。

「だから お前は海になれ」

「ふう・・。」

旭が帰宅するとヤスが
仏壇に参っていました。

旭の股間をつかむヤス。

「いって」

「早稲田一本じゃ… 旭」

「えッ?」

「男は…

 生まれたときから一本勝負じゃ!」

「ホントに いいの?」

「マジだ!」

「ありがとう…」

「おう」

「 ありがとね

 イッテんだって

 離せよ…」

股間はつかんだまま・・。

「親なんて割に合わねえよ

  しんどい思いして育てても

 最後には捨てられんだからよ」

「今まで捨てられなかったのも奇跡だけどね〜」

早稲田に願書を出す旭。

職場でもマスクを外さないヤス。

「風邪ひいてるヤツは俺のそばに寄んなよ

 旭にうつったら困るからな」

くしゃみをしたらなぐられた。

いっしょにお参りして絵馬も描きました。
まわりのみんなも描いて
旭のための絵馬ばかり・・。

「こっけいなもんだね〜親ってのは」

そして受験。
父に電話する旭。

「今から行ってくるから」

「油断すんじゃねえぞ 旭

 昼飯は ちゃんとトンカツ買って食うんだぞ」

「うん」

あっというまに受験はおわり・・。

「 やるだけはやったらしいんだけどよ

 もし ダメだったら…

 来年も…」

そこへ結果の通知をもってきた旭。

「親父!」

「ど… どうだった!?」

「一緒に見ようと思って」

「お… おう」

「開けるよ

 1187だから」

「11… 87?」

「うん…」

怖い顔で用紙をのぞきこむふたり。

「やった・・。」

後ろをむき顔をみせないヤス。

「まあ あれよ

 あんだけやりゃ俺だって通るわな」

「うん…」

「じゃ 仕事あっからよ」

「あッ」

「寺に電話しとけよ

 気にしてっから」

ふりむかないまま・・。

お寺で合格祝い。

たえ子もきてくれました。

「ごめん 遅くなっちゃって」

「お店は?」

「お客の顔が みんなあっくんに見えちゃって

  閉めちゃったわよ」

ヤスの姿はなし。

「あれ… ヤスは?」

「何か急に用事 思い出したって」

「へえ〜何だろう 用事って?」

「もう一人 一緒に飲みたい人がいるんじゃない」

「ああ…」

遺影を前にひとり飲んでました。

「アイツ… 早稲田に行くんだと

 早稲田だぞ

 早稲田大学法学部

 お前と俺の息子がよ

 昔よ

 「お前が勉強できないのは」

 「苦労ばっかりしてたからで」

  「本当は お前は賢いんだ」って

 俺が言ったの覚えてるか?

 やっぱりそのとおりになったじゃねえか

 ありがとな…

 お母さん

 アイツも頑張ったけどよ

 半分くれえはお前が

入れてやったようなもんだ

  けど 俺はアイツに…

  アイツに…

 あと 何かしてやれることはあんのかね?」


卒業式。
歌は仰げば尊し。

風呂場でなにやらしている旭。

ヤスはたえ子の店に。

「照雲ちゃんが明日9時に迎えにくるんだからね

 大丈夫? 覚えてる?

 朝の9時だからね」

「うっせえな 分かってるよ!」

「今日 何 作んの?」

「カレー」

「カレーって… 最後の晩餐でしょ」

「こういうときはな普通でいいんだ 普通で

 珍しいもん作って腹壊したら縁起悪いだろ」

ふたりでカレーを食べるヤスと旭。

「グリンピースが のってんだよね

 ウチのカレーは」

「うん 結局な」

「ここに落ち着くまで色々あったよね

 リンゴとハチミツのかわりにニンニクと焼酎入れたりさ」

「ああ あれなあれはいけねえ

 二度と作っちゃいけねえ」

「二日目でもどうにもなんなかったもんね」

「どんなカレーでも

  二日目にはどうにかなるもんなのにな

 俺よ

 二日目のカレーが

この世で一番好きかもしんねえわ」


「そう」

「それも 明日で食べ納めだな」

「別に 作りゃいいじゃない」

「一人だったらレトルトで十分だろうがよ」

「まあ… そっか」

「旭

 お前が ここに戻ってくんのは勝手だけど

 俺からは絶対に東京なんて行かねえからよ」


「うん…」

「まあ のたれ死にしたら

 骨くれえは拾いにいってやっから安心しろ

 そのかわりよ

 俺も… お前の足手まといにはなんねえ

 「戻ってこい」だの「面倒見ろ」だの

 絶対に言わねえ

 もし 足手まといになるくらいなら

 首 くくっからよ」


「えッ!?」

「たとえだ もののたとえ!

 それぐらいの覚悟だって話だよ

 マジメに心配してんじゃねえよ

 面白みのねえ男だなおめえは」

「ごめん」

「まあ だからよ その…

 俺のことは気にしねえで

 好きなように やれってこった

  あッ でもお母さんだけは連れてってやれよ

 上野動物園 行きたがってたからよ」

「他には?

 他にはないの お母さんが行きたがってたとこ」

「おお あのよお前がまだ ちんまい頃よ

 三人で でっかいトラック乗ってよ

 お父さんが

 「日本中 これでまわろうぜ」っつったらよ

 山だの 温泉だの 川だの…」

「うん…」

そのまま寝てしまっていたふたり。
翌朝、時計をみてびっくり。

「オイ 旭! 起きろ起きろ!」

「ああッ!」

「早くしろよ もうナマグサ来るぞ
 
 こんな日に何やってんだよおめえは

 早稲田の名が泣くぞさっさと食えよ」

「親父は?」

「うるせえ 早くしろ

 忘れてんじゃねえかよ 寝る前に入れとけよ

 カバン どこだ? カバン」

ヤスの靴下には大きな穴が。

「風呂 ブザーつけといたから」

「うん? ブザー?」

「満杯になったら鳴るようにしたから」

「ありがとな」

「何だよ これ入んねえじゃねえかよ」

「酔っ払ったまま 

 風呂入んのもやめた方がいいと思うよ

 風邪ひいたとき 

 水風呂入って気合いで治すのもダメだよ

 絶対 治んないから」

「そんなことはねえよ」

すすり泣きをはじめる旭。

「酔っぱらって帰ってきたら

 絶対 火 触んないでくれよ

 何か食べたかったら

レンジでできるものにして

 流しの下に買いだめしといたから

 野菜ジュースも買っといたから

 二日に一回ぐらいは飲んで

 つまみ うまいのは分かるけど

 塩辛いものばっか食べてたら

腎臓やられるから

 ちゃんと…

たえ子おばちゃんの言うこと聞いて

 ちゃんと 長生きしてくれよ

 親父

 ホントに…」


「すまん! クソ 行ってくる」

トイレにかけこむヤス。

照雲が迎えにきました。

「ヤスは?」

「 出てこなくて」

「ヤス! 早くしてよ 新幹線の時間があるからさ」

「クソは時計 持ってねえんだよ」

「ホントに間に合わないんだよ」

「じゃ… 行けよ」

「ヤス!」

「いいよ おじちゃん

 親父 行ってくるから

 おう東京着いたら電話する」

「電話だって タダじゃねえんだ」

「じゃ 手紙書くよ」

「読むの めんどくさくてよ」

「じゃあ 今 言うね」

「しゃべんな!クソが引っ込むだろう」

「今まで ありがとう!

 東京行かせてくれて ありがとう!

 俺 頑張るから!

 親父も頑張って

 元気でいてくれ!」


トイレットペーパーが回る音。

「夏休みには 帰ってくるから。

 じゃ。」

旭はでていきました。

トイレで泣いているヤスは
車が出る音をきいて
外に飛び出しました。

「旭〜!!」

おいかけるヤス。

「旭〜〜!」

家に戻ると旭の食べたカレーの皿が
ありました。

現在。

『あのカレー

 親父はちゃんと食べたんだろうか

 あれから 俺は家でカレーを作ってない

 もし 親父もそうなら…

 それが 親父の…

 最後の二日目のカレーだったはずだ』

 
電車をみながら思いだす旭。

職場にもどる旭。

「あっくん いっとく?」

と飲みにさそわれました。

旭に電話をする坂本さん。
でも留守電。

「どっか行っちゃったか」

「ママ 旭は?」

「今日はダメみたい 諦めよう」

店からでて留守電メッセージに気づく旭。

「あッ 市川君?

 もし暇だったら ご飯食べにこない?」

朝、健介がおきると
旭がいました。

「何で 旭 いるんだよ」

「ご飯 食べにきました」

「夜だよ 呼んだの」

「健介

 これを愉快な酔っ払いというんですよ」

「カレー…」

「ごめん 別のものの方がよかったかな?」

「何言ってんですか!

 カレーはね

 二日目の朝が一番おいしいんです」


「そう?」

「いただきます

 健介

 二日目の朝カレーってのはな

 特別なんだよ」


「どうして?」

「一日目のカレーは

お客さんでも食べられるだろ

 でも 二日目の朝のカレーは

 家族しか食べられないんだよ

 家族で こうやってさ

 昨日の残りだって食べるから

 特別おいしいんだよ

 ウチの親父が昔 そう言っててね」


「市川君ってさホント よく お父さんの話するね」

「母親 早くに亡くしたんで」

「お父さんは?いつ お亡くなりになったの?」

「親父は…」




後半、涙流しっぱなし・・。
ヤス、旭と別れるのがさびしくて
子どもみたいなふるまいをしたあげく
栄養失調で倒れるなんて・・
ほんとに旭がいなくなったら
どうなるんだろうと旭も心配になるよ。
父のためにお風呂ブザーをしたり
野菜ジュースを用意したりと
旭も本当にいい子。

照雲も立派に父のあとをついで
ヤスを導いてくれました。

家を出る旭をみおくれなくて
トイレにこもってでてこないヤスの姿が
もう泣けて泣けて・・。

このまま別れて終わりだったんじゃないよね?
大学生になってから帰省とかしてるよね?

2日目のカレーってそんなふうに
考えられるんだ。
カレーは2日、へたすると3日目まで
かかって食べますが。

旭が合格した後、ヤスが親にしてやれることは・・
っていってましたが、
まじめにいうと 私立の四大、しかも東京!
学費に生活費の仕送りとやらなきゃならことは
まだまだ!






市川安男…内野聖陽
市川旭…佐藤健
坂本由美…吹石一恵
幸恵ゆきえ…加藤貴子
市川美佐子…常盤貴子
照雲…野村宏伸
たえ子…麻生祐未
海雲…柄本明











2013.02.17 Sunday 23:08 | comments(2) | trackbacks(6) | 
<< 宇宙兄弟 第45話「5人の青レンジャー」 | main | ジャンプ12号感想 >>
あんじー (2013/02/18 1:17 PM)
honeyさん、こんにちは。

今回もいいお話で泣けましたね~。
背中にカイロを貼って励ます照雲さん、ナイスw
「お前は海になれ」
カイロを貼った背中と海のショットは秀逸でした。
初めてあっくんが親父を思って涙をみせるシーンからはもう号泣。
健くんの高校生姿は永久保存版クラスですがw特に、合格とわかって背を向けるヤスを見た瞬間のアップは忘れられません。

ウチは最後のカレーは少し残ったら牛乳をいれてリゾット風にしたりしていますわ。
honey (2013/02/18 1:48 PM)
あんじーさん、こんにちは。

毎回泣けますよねえ。
照雲さん、さすが父の息子。
ちゃんと和尚になってます!

旭の父を思う気持ちもほんとに泣けます。
ヤス、長生きしなきゃ・・!

カレー、結局3日目でもカレーのままのことが
多いかな〜。









とんび 第6話:父と子の最期
引っ張るなぁ・・・(へ ̄|||| )ウーム・・・ 今回はサブタイにも最期(意味:命の終わる時、死に際、臨終)って言葉を使ってるけど 希望的観測を込めて、ヤスは生きてると思いたい!!! 冒頭に坂本さん達が職場で話してた会話でも 「あっくんはさ、若干マザコン入っ
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とんび #06
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