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半沢直樹  第6話

第6話



東京中央銀行頭取室

「はい」

「金融庁の国松長官からお電話です」

「つないでくれ」

「代わりました 中野渡でございます」

「ご無沙汰しております 長官

 はい  はい

 金融庁検査… でございますか?」

第二営業部

「半沢直樹が東京中央銀行大阪西支店から

 本部の中枢 それもエリートが集う精鋭集団といわれる

 営業第二部に栄転してすでに1年がたとうとしていた。

 かつて 5億の融資失敗の汚名を着せられ

 銀行員としての将来を失いかけた半沢だったが

 見事に その汚名を晴らし

 今の地位を勝ち取った」


「おはよう」

「おはようございます」

「よし いつもどおり目標10分始めよう」

「半沢は 飛ぶ鳥を落とす勢いで実績を積み

 行内に その存在感を示すようになっていった。

 全てが順風満帆に思えたが…」

「半沢 ちょっといいか?」

「はい」

「まただ。お前にご執心の大和田常務が

 ぜひ会食したいと言ってきてる。

 そういう つきあいを好まないのはよく分かってるが

  さすがに3回目のお誘いだ。

 そろそろ俺も断り切れなくてな。

すまんが今回だけ 俺の顔を立ててくれ。」

「半沢の心の底には

 黒い憎悪の火種がくすぶっていた」

父の工場を切り捨てて自殺に追い込んだ
銀行員が過去の大和田・・。

緊急取締役会議

「来月頭から当行において 金融庁検査が実施される」

ざわつく会議室。

「金融庁検査とは

 銀行が正しい業務をおこなっているかどうか

 融資取引に問題がないかなどを
 
 金融庁の検査官が来て 調査するものである。

 もしも そこで大きな問題が発覚した場合

 厳しい業務改善命令を受けることになる。

 そうなれば 銀行の信用は失墜し

 経営基盤そのものが揺るぎかねないのだった」


「問題は 引当金ですね」

「もし 引当金を積むようなことにでもなれば

 我が行の経営そのものが揺るぎかねない

 各融資先への与信判断に間違いがないか

 もう一度 十分に精査してくれ」

「準備期間が たった2週間でどこまで対応できるか…」

「頭取のお力で延期してもらえませんか?

 このままでは通常業務も…」

「決まったことに あれこれ言っても問題は解決しませんよ

 今こそ 我々が一枚岩となって

 この困難を乗り切ろうじゃありませんか

 どうか ご安心ください中野渡頭取」

渡真利と時枝と半沢。

「緊急の取締役会で 上は相当バタバタしてるらしいぞ」

「銀行全体に関わる問題か?」

「恐らくな おい半沢 聞いてんのかよ?」

「うん まあ 上で何があろうと俺達は目の前の仕事をするだけだ」

「はあ〜さすが営業第二部のエース様は

 おっしゃることが違いますね」

「そろそろ行くわ 伊勢島ホテルに呼び出されてるんだ」

「あらあら 法人部のホープ様もお忙しいことでねえ」

「半沢 あんまし飛ばしすぎて息切れすんなよ」

「時枝もな」

時枝は出て行きました。

「そういえばさ 最近会った?近藤に」

「いや こっちに来たとき祝ってもらって以来だな

 結構バタバタしてたから」

「あいつさ 出向先のタミヤ電機で結構 苦戦してるらしいぞ」

「そうか」

「どう? 今夜あたり久々に飲みにでも誘ってみるか」

「悪い 今夜はちょっとヤボ用がある」

「あらあら」

伊勢島ホテルからすごい形相ででてくる時枝。

大和田常務と会食する半沢。
岸川統括部長もいっしょ。

「半沢くんは今の当行をどう思っているかね?

 私は正直 憂いている

 12年前の合併は 表向きは対等な合併だったけれども

 実際に ふたを開けてみれば

 主要ポストのほとんどは旧東京第一銀行出身者が占めて

 我々 旧産業中央の人間は

 皆 辛辣な思いをさせられた」

「常務がいらっしゃるじゃありませんか」

「たかが常務だよ

 頭取の椅子に中野渡さんが座っているかぎり

 我々が日の目を見ることはないだろう

 半沢君 私とともに上を目指さないか?

 我々の手で もう一度

 旧産業時代の威信を取り戻そうじゃないか

 う〜んやはり酒は この鳶姫にかぎるね

 金沢の地酒だよ 君 飲んだことあるかね?

 昔 金沢支店にいたときに飲んで以来

 私は ずっと これひと筋でね」

「そういえば 確か君の出身も金沢でしたよね?」

「ほう それは奇遇だねえ

やはり 私と君は縁があるということかな」

「実家は金沢で

 半沢ネジという小さな工場をやっております」

「ネジ?ふ〜ん そう

 まあ 今は厳しい時代だからね

 工場の経営も さぞ大変だろう

 しかし まあ 君がこうして立派な銀行員になったことは

 ご両親もきっと心強いんじゃないかな」

「父は… 25年前に他界しました」

「ああ そうか

 君 まだちっちゃかったんじゃないか?」

「中学2年でした」

「ああ…君も大変な苦労をしてきたんだね

 半沢君私に力になれることがあれば

 何でも言ってくれたまえ

 今後とも力を合わせて

 東京中央銀行をよくしていこうじゃないか」

内藤第二営業部長によばれる半沢。

「半沢君」

「120億!?」

「運用失敗による損失が確定的になった」

「伊勢島ホテルがですか?

 しかし あそこは先日 うちから

 200億の融資をしたばかりでしょう」

「担当の時枝は 同期だったな」

「ええ 出身は東京第一銀行ですが」

「残念ながら今回の件で外されることになった

 半沢 お前に担当してもらいたい

 早急に120億の損失穴埋めと

 ホテルの経営再建案を検討してくれ」

「待ってくださいそういうことなら

 審査部あたりが引き継ぐのが妥当でしょう

 なぜ私なんですか?」

「命令だ 命令?」

「どなたの? 部長ですか?」

「頭取だ」

「頭取が どうして?」

「そんなことは俺にも分からん ただ 大阪西支店で

 収不可能と思われた5億の損失を見事に取り返した

 その実績が買われたのかもしれんな」

「5億と120億では桁が二つ違います」

「それでもやってもらわなければ困る

 2週間後 金融庁検査が入る

 ターゲットとして伊勢島を狙ってくることは確実だ」

「ということは まさか」

「必然的に金融庁検査の先頭に立ってもらう

 もし 業績悪化した伊勢島の融資に

 回収懸念があると判断されたら

 当行は それを補うために

 莫大な金を積まなければならなくなる

 引当金恐らく その額は…」

「1千億以上でしょうね」

「そうなれば我が行は破綻をきたし

 頭取のクビがとぶ。

 金融庁検査まで あと2週間

 それまでに120億の補填と

 ホテルの再建案を検討してくれ

 やってくれるな?

 半沢!」

半沢は頭取のところへ。

「営業第二部 半沢次長がいらっしゃいました」

「入れ」

「よろしく頼む」

黙ってお辞儀する半沢。

「2週間後に行われる金融庁検査において

 120億の運用損失を出した伊勢島ホテルを

 問題のある融資先 いわゆる 実質破綻先と

 金融庁が判断した場合

 東京中央銀行はそこが潰れたときのための

 準備金として 莫大な資金の積み立てを

 金融庁から通告される

 これを引当金という

 引当金は その全てが 経費として計上され

 仮に 伊勢島ホテルへの引当金が

 1500億円必要だとするなら

 今年度 3000億円ほどの収益を

 見込んでいた東京中央銀行は

 一気に収益が半減し 株価の暴落を招き

 経営の根幹を揺るがす事態になりかねないのだった

 伊勢志摩ホテルの「実質破綻先」への分類は

 すなわち 東京中央銀行の失墜なのである

 金融庁検査までの わずか2週間

 伊勢志摩ホテルのより確実な経営再建策の提示と

 損失120億の補てんが

 半沢に課せられた使命である

 半沢直樹の両肩には

 東京中央銀行の未来が

 重く のしかかっていた」

 
小野寺とともに伊勢志摩ホテルをたずねた半沢。
羽根専務が応対。

「半沢さんに 小野寺さん

 東京中央さんはすぐに担当者が代わるから

 名前覚えるの大変ですよ」

「申し訳ございません ですが今後

 御社の経営回復は 我が営業第二部が

 全力でサポートします」

「まるで うちが倒産するみたいな言い方ね」

「その可能性は大いにあります

 120億の運用失敗は見過ごせません

 これで御社は二期連続の赤字となる

 このままでは 金融庁検査で問題ありと仕分けされ

 今後の融資が継続できなくなる可能性もございます

 そうなりますと…」

「そうならないようにするのが

  あなた達の役目でしょ」

「もちろん 努力はいたしますが

 そのためにも事業計画の見直しが急務です」

「大げさね 何もそこまで心配する必要ないでしょう

 運用失敗は株への投資によるもので

 ホテル経営とは無関係なんだから」

「それでは金融庁検査を乗り切れません」

「それは そちらの勝手な都合でしょ

  うちは銀行さんの都合で事業をしてるわけじゃないのよ」

「でしたら 先日融資した200億

 いったん ご返済いただきたい」

「どうしてかしら」

「業績黒字が融資の条件だったはずです

 赤字になるのなら 話が違う」

「おかしなこと言うのね

 財務内容は全て書類で提出したはずです

 運用を隠したつもりはありません

 失敗を見抜けなかったのはあなた達の責任でしょう

 それを そっちの勝手な都合でいきなり返せだなんて

 まるでヤクザね 耳を疑うわ」

「専務のお考えは よく分かりました

  ですが 湯浅社長のご意見もお伺いしたい

 お会いできますか?」

「あいにく海外出張中です

 それに この件に関しては私が一任されておりますので

 どうしてもお金を返せとおっしゃるなら

 銀行内の合意を取ってきていただきたいわ」

「分かりました では その方向で検討させていただきます」

銀行。時枝と半沢。

「伊勢志摩ホテルは 

 代々 湯浅家がトップに君臨する同族経営だ

 特に 先代の湯浅高堂のワンマンぶりは

 相当なもんだったらしい

 息子の湯浅威が社長を継いでからも

 古い経営方針を脱却できずにいることが

 業績不振の原因になってる

  そういう隙を突いて 資金運用でひと旗揚げようとしたのが

 羽根専務だ 

 利益を上げれば湯浅一族を押しのけて

 自分が社長になれるとでもたくらんだんだな」

「その結果 120億もの損失を出した」

「ああ 表向きは湯浅社長の指示で仕方なくやったと

 羽根専務は根回ししてるがな

 実際は あの人が独断でやったことだと思う

  うちはそれを見抜けずに

 まんまと200億の融資を実行してしまった」

「仕方ないさ 伊勢島を任されてから

 たった3ヵ月だったんだろ?」

「どんな事情があるにせよ 見抜けなかったのは俺の責任だ!

 それに サブバンクの白水銀行は

 融資するはずだった100億をかなり早い段階でストップしてる」

「白水が?

 白水は 運用損失を見抜いたっていうのか?」

「恐らくな 前担当の京橋支店から

 もっとちゃんと引き継ぎをしていれば

 今回の融資を止められたのかもしれない」

「うまくいかなかったのか 引き継ぎ」

「通り一遍のことしか教えてもらえなくてね

 京橋支店といえば今の貝瀬支店長になる前も

 岸川部長 大和田常務と三代続けて

 お前達 旧産業中央出身者が支店長を務めた

 いわば産業中央出身者の本丸のようなところだ

 それが俺達 元東京第一が集まる法人部に

 大口取引先の伊勢島ホテルを横取りされて

 面白いわけはないからな」

「バカバカしい 同じ行内で足の引っ張り合いかよ」

「支店長の貝瀬さんは 見栄とプライドの塊みたいな御仁だからな

 それに その部下の古里って男もなかなかのたぬきだ

 伊勢島のことは 俺よりそっちのほうが よっぽど詳しい

  あとは その二人に聞いてみてくれ分かった

 悪かったな厄介事を押し付けちまって」

「まったくだ 今度おごれよ」

「そうしたいのは やまやまだが しばらくは無理だ」

「お前 まさか…」

「名古屋の系列に出向が決まったよ

 驚け 取締役待遇だぞ」

「抗議しろ 時枝! 今回の件はお前一人の責任じゃない」

「無駄だよ もう決まったことだ

それが銀行さ

 お前が一番よく分かってるだろ

 引き継いでくれたのがお前でよかったよ

 あとのことは頼んだ」

立ちあがった後いきなり叫んで
机を蹴り椅子をなげつける時枝。

「わあ〜ッ!わあ〜ッ!」

渡真利と半沢。

「運用損失を白水は見抜いていたってことか」

「時枝ほどの男が気づけなかったことを

 どうして 白水の担当は気づくことができたのか」

「いや 銀行としても格段うちが上だ

 情報量で負けるはずがない

 何かあるな こりゃ」

「なあ 白水の融資本部にパイプはないか?」

「融資本部ねえ

 あッ アブ アブ アブ アブ… ほら」

「大丈夫か? おい」

「アブだよ 」

「ラグビーの油山か」

「そう 油山俺 同じゼミだった

 お前 よく知ってんだろ」

「ああ ひよ裏の鳥勢でよく飲んだ」

「あいつ 今 白水の融資部次長だ」

京橋支店をたずねる半沢。
古里が対応。

「次長 ですから もう私には関係がないって言ってるでしょう

 伊勢島のことは全部 時枝さんに引き継いだので

 彼に聞いてください」

「時枝からは 引き継ぎがあまりうまくいかなかったと伺ってます」

「まさか 伊勢島の運用失敗を見抜けなかったのは

 うちに責任があるとでもいうんじゃないでしょうね」

「とんでもない ただ白水は見抜いていたようなので

 その理由に心当たりはございませんか?」

「他の銀行のことなんか分かるわけないじゃないですか

 とにかく 私の知ってることは全部引き継ぎましたから

  ああ…あッ 失礼

 次の予定がありますんで

 もう勘弁してください

 失礼します」

貝瀬支店長に報告する古里。

「帰ったか?」

「はい 随分と しつこく伊勢島ホテルについて聞かれましたが」

「古里 厄介事は…分かってるな?」

「はい」

半沢は道で近藤にばったり。

「近藤」

「よう」

「もしかしてここか?」

「そうなんだ 今期の融資を頼みにな」

「悪いななかなか飲みに誘えなくて」

「俺も こう見えて意外と暇がない お互いさまだ」

「うまくいってんのか?」

「まあ どうにかこうにかな

 おっと やばい もう行かないと」

「近いうち 一杯やろうや」

「分かった」

「じゃあな」

古里と近藤の回想シーン。

「だからさこの数字の根拠はどこからくるのかって

 聞いてるんだよ

 何度も言わせるなよ まったく」

「社長と営業担当にヒアリングして作りました

 現状ではそれ以上の予測はできません」

「大体中期計画書もないんじゃね」

「計画書は 社長と練り直してるところです

 次回までには お持ちできると思いますので

  これで何とか融資を」

「これじゃ無理だね やり直し」

「お待ちください 今月末までに融資をしていただかないと

 うちは立ち行かなくなってしまいます

 直すところは直しますから

 どうか これで融資を通していただけませんか このとおりです」

「近藤さん あなた それでも元銀行員ですか?

 みっともない」

また頭に黒いものが広がる・・。

「601 601 601…

 40 40 140 140 140…

 075 075 125 125…

 1214 1001

  1214 1001 1214…」

数字を数えなんとかおさまった。

タミヤ電機。

「どうするんですか?近藤さん!」

「申し訳ありません」

「社長 中期の事業計画書のほうは考えていただけましたか」

「事業計画書?

 そんなもの なくたって今までは融資を取れていたんだよ

 君に原因があるんじゃないの?」

「簡単なものでも結構ですので 計画書を…」

「モーツァルトの言葉を知ってるか?」

「はッ?」

「曲を催促されたとき彼は こう言うんだよ

 心配するな もうできた

 曲は… ここにある

 事業計画書などいちいち書かなくても

 これくらいの会社なら問題ないんだよ」

「しかし…とにかく」

「少しは頭使ってくださいよ

 銀行の知り合いに頼んで裏から手を回してもらうとか

 やり方はいくらでもあるでしょう

 あなたは そのためにここにいるんですよ」

部屋にもどると社員が集合していました。

「とにかくつてをつかって使って探しまくれ
 
 都銀 地銀 信金 どんな額でもいい

 月末までにマジで やばいぞ
 
 東京中央は もう頼るなこっちで探すしかない

 決めるまで戻らない覚悟でいけいいな?」

「はい」

「あ〜あ 融資の継続一つも決められなくて部長だもんな

 いいよな 元銀行さんは」

「小川そういう言い方をしたら失礼だろ

 元銀行さんに

 まあ そんなもんだから ここにいるんだろうけ ど元銀行さんは」

渡真利と半沢

「近藤がつくった書類が出来が悪いとは考えにくい

 あの古里ってやつの見る目が曇ってるとしか思えない」

「でもさ半沢 今は人のこと心配してる場合じゃない

 伊勢島ホテルのことに集中しろよ

 再建案は進んでんのか?」

「進むも何も 湯浅社長は海外に行っていて話ができない

 羽根専務は銀行にも非があるの一点張りだ
 
 こっちの話に耳を傾けようともしない」

「そんなんで大丈夫なのか」

油山がやってきました。

「半沢 渡真利」

「おお〜」

「アブ 元気?」

「元気 お前 ちょっと太ったな」

「ちょっとっていうか かなりな

 週1 二郎は欠かせないからね」

「大ダブル野菜カラカラめか?」

「さすがに この年じゃ小ダブルだ

 で 話って何?」

「実はさ…伊勢島ホテル」

「えッ?」

「そうだ」」

花は岸川取締役の自宅で奥さま会。

「今日初めて 半沢次長の奥様が来てくださいました

 同じ旧産業中央出身の妻同士

 末永くおつきあいしていただきたいわ」

「はい皆様のお仲間になれて光栄です」

「半沢次長といえば行内でも花形といわれる

 営業第二部のエースですもの

その奥様と お知り合いになれてこちらこそ光栄ですわ」

「いえいえ うちはそんな大したものじゃ…」

「そんな ご謙遜なさらなくてもよろしいんじゃありませんの?

 度の金融庁検査でも重要な担当を任されたんでしょ?」

「はあ…」

自宅で食事。

「じゃあ 何 その金融庁検査がうまくいかなかったら

 また直樹が責任取らされて

 どっかに飛ばされちゃうかもしれないってこと?」

「そういうことになるかもな」

「なるかもな じゃないわよ

 嫌だよ 私 こっちに来てまだ1年もたってないのに

 もう引っ越しなんて あり得ない」

「そうならないように努力するよ」

「どうして そんな難しいこと引き受けちゃうのよ」

「しょうがないよ 頭取命令なんだ さすがに逆らえない」

「えッ 頭取命令?

 すっげえ かっこいい〜」

「かっこいいか?」

「かっこいいよ でも なんで直樹なわけ?

 ホテルの再建なんてやったことあんの?」

「昔 一度だけな」

「そうなの?」

「うん」

取締役会。

「伊勢志摩ホテル担当の半沢次長より

 融資した200億の即時返済を要求するための

 合意を頂戴したいとのことですが

 ご検討をお願い申し上げます」

「営業部としての見解は?」

「即時返済を希望しております」

「私も同意見ですね ふさげる傷口は

 ふさいでおいたほうが得策であると考えます」

「今 200億を引き揚げて伊勢島は大丈夫だろうか」

「半沢次長はいったん全額を引き揚げ

 再稟議した上で 適正な額を融資すべきだと申しております」

「そうか では…」

そこにストップをかける岸川。

「お待ちください。

 先ほど 伊勢島ホテルの羽根専務より連絡がございました」

「羽根さんから?」

「伊勢島ホテルは サブバンクである白水銀行にも融資を止められ

 さらに運用失敗による120億の損失

 そこにきて今 うちから200億を取り上げられるとなると

 経営基盤そのものが揺らぐ深刻な事態だと申しておりました」

「岸川部長 半沢次長は

 頭取が直々に指名した伊勢島ホテルの担当だよ

 その判断が間違ってるというのかね?」

「決してそのような意味では」

「しかし 待てよ確かに無理に200億を回収して

 もし そのことが原因で

 伊勢島そのものがつぶれてしまえば

 これ 本末転倒ですね

 頭取 ここは一つ

 慎重な ご判断を」

と結局は邪魔する大和田。

結果をきかされた半沢。

「つまり 伊勢志摩ホテルに200億の返済は要求しない

 そういうことですか?」

「そうだ」

「それでいて金融庁検査は乗り切れと?

  分かりました それが取締役会の意向であるなら

 しばらく様子を見ましょう

 ですがそれは判断として間違ってます

 どんな事情があるにせよ

 銀行としての筋を曲げるべきではありません

 回収できない金は貸すべきではない」

「言いたいことは分かる だが これは

 頭取も納得した上での決定だ」

「伊勢島ホテルは なぜ そこまで200億の返済を拒むんでしょうか

 伊勢島にしてみれば 我々が金融庁検査で引当金をあてがわれ

 今後の融資がストップすることのほうが痛いはずです

 にもかかわらず融資の返済だけではなく

 我々の金融庁検査対策にも非協力的な態度を見せている

 何かがおかしい」

羽根専務は誰かと電話中。

「とりあえずこちらのほうは予定通りです。

 でも あの半沢という銀行員

 何だかいろいろ調べてるみたいですけど

 金融庁検査を前にどうせ何もできないでしょう

 御行とは これからも末永くおつきあいさせていただきたいわ

 私がこの伊勢島の社長になったあとも」

廃品回収場で働く戸越をたずねた半沢。

「戸越さん 伊勢島ホテルの経理担当だった

 戸越茂則さんでいらっしゃいますよね」

「何者だ?」

「東京中央銀行の半沢と申します

 お伺いしたいことがあってまいりました」

「俺は お前らに話すことなんか何もない」

「白水銀行の油山からあなたのことを聞きました

 伊勢島ホテルは 株の運用失敗で120億の損失を出しながら

 それを隠蔽しようとした

 あなたは そのことを白水銀行に内部告発しましたね?

 おかげで 白水は融資を止めることができた」

「だったら何だ」

「戸越さん どうして当行ではなく白水に内部告発したんですか?」

「ああ?」

「普通なら

 メインバンクである当行にと考えるはずじゃありませんか?」

「おめでたいやつだなあ

 何も分かってない」

「まさか当行にも告発したんですか?

 しかし もみ消された」

「ああ しかもあんたら東京中央は

 俺を逆に伊勢島にリークした

 結局 俺はホテルにいられなくなって

 ここに拾ってもらったんだ

 俺自身が廃品みたいなもんさ」

「うちの誰に告発したんです?」

「決まってるだろ 当時の担当者だよ!

  分かったら さっさと消えてくれ

 でないと俺 あんたをぶん殴っちまいそうだ」

「戸越さん 東京中央銀行があなたにしたこと

 行を代表して謝罪いたします

 本当に申し訳ありませんでした」

「よせ 今さら冗談じゃねえ!」

「油山が言っていました

 あなたのおかげで融資をだまし取られずに済んだ

 あなたには感謝してると

 私も あなたの勇気ある行動を支持します

  もう一度 あなたの告発を握りつぶした男を追い詰めるのに

 力を貸していただけませんか?」

「ふざけるな!

 お前らを信用できるわけないだろうが

 二度と俺の前に現れるな」

古里をたずねた半沢。

「何なんです やぶから棒に内部告発だなんて」

「伊勢島ホテルの戸越経理課長から

 120億の運用失敗のことを聞かされていたんじゃないですか」

「知りませんね そんな話は」

「いや あなたは知っていたはずだ

 戸越さんはあなたに話したと言っている」

「そんなの ホテルを解雇された男の逆恨みの たわ言でしょう

 いちいち真に受けるなんてバカげてますよ」

「古里さん本当のことを言うなら 今ですよ」

「いい加減にしてくれ

 その年で次長になったからっていい気になるなよ

 これ以上言いがかりをつける気なら

 本部の上に報告して

 あんたのやり方を問題にすることだってできるんだよ
 
  この私は」

「やれるもんならやってみろ

  ただし あとで

あんたの不正が分かったときは

 容赦はしない 倍返しだ

 覚えておけ」


倍返し出た!!

『こいつは何かを隠している。
 
 なぜ 告発をもみ消した?

 融資を受けたかった羽根専務あたりが

 担当だった古里に頼み込んだか?

 いや 古里は小者だ ばれたら懲戒解雇になるような

 そんな危ない橋を渡れるタマじゃない

 羽根専務が相手にするとは考えにくい

 何か大きなかげが動いたか?

 それを突き止めないかぎり金融庁検査は乗り切れない』

半沢を待っていた湯浅社長。

「湯浅社長」

「先ほど日本に戻ってきたばかりでね

 あなたには一刻も早くお会いしなければと思い

 連絡を入れたら こちらに来ているとのことでしたので」

「初めまして 東京中央銀行の…」

「半沢直樹

 中野渡頭取にお願いして

 あなたを指名したのは 私です

 昔 一度 あなたにお会いしたことがある

 覚えてますか あの大東京ホテルの

 再建支援策協議の場を」

回想

「何を縮こまってるんですか!

 経営方針を刷新していただく覚悟があるのなら

 産業中央銀行は全力で支援させていただきます!」

半沢の勢いに驚いてコーヒーをふいた湯浅は
そのときのコーヒーのシミがついた半沢の名刺を
もっていました。

「あのときの…」

「学校を卒業して あのホテルで修業していた時期でした」

「そうでしたか」

「どうぞ

 主力銀行をはじめほとんどの銀行が手を引く中で

 あなただけが積極的に支援の可能性を見いだし

 再建のために我々の経営企画会議まで顔を出し

 奔走してくれた

 今まで様々な銀行員を見てきましたが

 あとにも先にもそんな人は初めてでした

 一体なぜ あそこまで?」

「助かる可能性のある患者を見殺しにする医者はいません

 それと同じです

 私は大東京ホテルを救えると信じた

  だから支援した それだけのことです」

「あなたのその曇りのない正確な目に

 今の伊勢島ホテルはどう映りますか?」

「瀕死の重傷を負った巨象です

 ですが 死んではいない

 まだ救う方法はあるはずです」

「私なりに新しい再建プランを練ってみた

 これまでの国内 欧米中心の客層から

 アジアをメインに顧客を獲得していこうと思う

 すでに上海とシンガポールの

 大手旅行代理店とは契約してきた」

「それで海外に?」

「ナルセンに 最新のITシステムの開発も依頼してある」

「ナルセンというとあのITベンチャーの?」

「年内には 海外から直接予約できる独自のシステムが完成する

 さらに 月に一度外部から有識者を招き

 刷新会議も開く予定だ」

「それは つまり御社を縛り続けた

 悪しき伝統からの脱却

 ワンマン経営者であるお父様との決別

 そう考えてよろしいですね?

 その覚悟が おありなら

 御社は立て直すことができるでしょう」

「ありがとうございます」

「ですが まずは金融庁検査です」

「そこを乗り切らなければ御社も うちも破綻します」

「半沢さん 120億もの運用損失

 そして その報告が遅れたこと

 ほんとに申し訳なく思っております」

「全ては 羽根専務が独断でやったことでは?」

「そうだとしても

 それを許してしまったのは私の責任だ」

「分かりました

 では 社長は再建プランのさらなるブラッシュアップと

 120億を補填する方策探しを急いでください」

「分かりました」

「それと  もう一つ お願いしたいことが」
 
古里と近藤。

「私もね できることならタミヤ電機のために

 融資を通してあげたいんだよ」

「ありがとうございます」

「バカにしてんのか? おい」

「えッ?」

「いくら融資を取りたいからって

 こんな できもしない嘘の計画書作ってきやがって」

「嘘だなんていくら何でも それは…」

「何だよいえ…」

「具体的に どこがダメなのか

 おっしゃっていただけませんかそこを直しますので」

「だから それを考えるのがあんたの仕事だろ

 そんなことも分かんねえのか!

 銀行を出されるわけだ

 いいか?

 もっと正確な数字を入れてこい

 でなきゃ死んでも融資は実行しねえぞ」

近藤の様子がまたおかしい!
黒い液体が落ちてきて
数字を数える。目には涙。

「426000 426000…336000 336000…

 2121 210…1214 1001

  1214 10011214 1001…12…」

ふらふらと外にでる近藤。
古里や田宮社長やタミヤ電機の社員の言葉が
うかび頭が真っ暗になってその場に座り込みました。

そこへやってきた半沢。

「近藤」

「半沢・・俺は 俺は…」

「ちょっと つきあえ」

剣道をするふたり。

「面 面 面〜!イヤーッ 面 面 面!

 面!来ーいッ」

「イヤーッ 面 面 面!

 突き!来ーいッ イヤーッ 面 面 面!

 面!」

「うう…」

近藤をどんどんおいつめました。

「大学時代を思いだせ 近藤!」

「ああ ああ…ああッ

  うわーッ!面!」

「イヤーッ イヤー!イヤーッ!

 ウオーッ ウオーッ ウオーッ!」

なんだかふっきれたよう。

「何だよ」

「いや」

「頭打たれすぎたか」

「ありがとう」

古里をよび出した戸越。

「どうも ご無沙汰してます」

「戸越さん」

「遅かったな」

「困りますよ 急に呼び出されても

 こっちも今は 金融庁検査だ何だで忙しいもんでね」

「金融庁検査で 伊勢島がやり玉に挙がってるらしいな」

「よくご存じで でも あんたには関係ないでしょう

 伊勢島の人間じゃないんだから」

「誰のせいで こんなことに…」

「ご自分のせいでしょう」

「120億の損失が出ることを俺は あんたに伝えた

 なのに何で目をつむった」

「また その話ですか

 クソ忙しいのに 出向いてやって何の話かと思ったら

 もう その話は終わったんだよ」

「俺の中では終わってない」

「いや 終わったんだ

 あんたが全部 悪いんだよ

 内部告発なんて大それたことをするからだ」

「お前がそれをもみ消して

 俺のこと羽根専務にリークしたんだろうが」

「誤解だって言ってんだろう 俺はキチンと上に報告したんだ

 隠蔽したのは俺じゃない 上の人間だ」

「誰だ」

「あんたに関係ねえだろう

  これ以上意味のない話するんなら 帰るぞ」

「いや まだ話はある 俺じゃないけどな」

半沢がいました。
近藤さんも!!

「最近の銀行員にはまぬけがいるなあ

 隣に どんな客がいるか分からないのに

 内部情報をデッカイ声で ベラベラ話して平気なんだから」

「まったくだなあ

 損失が出ることが分かっていて報告しなかったなんて

 それは まずいんじゃないの?古里君」

「お前ら…」

「どういうことかキッチリ説明してもらおうか」

「何のことだ?」

「さっきの会話は全部 録音した

この期に及んで 下手な言い訳は見苦しいだけですよ」

「古里 お前は戸越さんの内部告発によって

 伊勢島が巨額の赤字になることが分かっていた

 にもかかわらず それを隠蔽し融資の実行を進めた

 なぜ そんなことをした?

 言ったはずだあとで分かったら容赦はしないと

 どうなんだッ 古里!」

「申し訳ない

 でも信じてくれ 俺は貝瀬支店長に報告したんだ

 しかし その件はしばらく様子を見ると言われて…」

「全部 貝瀬支店長の指示か?」

「おおッ」

「信じられないな」

「嘘じゃない 信じてくれ」

「証拠は?」

「証拠?」

「お前が支店長に

 内部告発のことを伝えた証拠だよ

 口頭で伝えたわけじゃないだろう 報告書があるはずだ」

「あるにはあるが疎開資料の中です」

「その疎開資料は 今どこだ?」

「京橋支店の金庫室

 でも 金融庁検査が始まる前に

 支店長が自宅に運ぶことになってるんで」

「自宅は厄介だな いつ運ぶんだ?」

「今夜 10時に車で」

今は午後9時15分

「今すぐ回収にいく」

「本気ですか? もう間に合わない」

「そんな物騒なものお前らなんかに任せておけるか

 もし そんなものが金融庁の目に触れてみろ

 一発で業務改善命令だ

 そして東京中央銀行の信用は失墜する

 金融庁検査の前に 俺が預かる」

「そッ そんなこと言ったって無理だよ

 金庫室は 担当課長じゃなきゃ入れないのは ご存じでしょう」

「無理かどうかはやってみてから言うんだよ

 とにかく行くぞ」

「あッ 協力したら 今回のことは見逃してくれますよね?」

「そんな訳ないだろう

 処分が多少マシになるだけに決まってんだろうが

 だが もし協力しなければさっきの会話を銀行中に流す

 そうなったら お前は

 退職金なしの懲戒解雇だ」

京橋支店行員用通路

「金庫室の扉を開けるには

 まず 8桁の暗証番号を打ち込まなければならない

 次に 鍵をさして開錠するのだが

 その鍵は この中に収納してあり

 そのボックスを開けるにも

 また別の暗証番号が必要となる

 それらの暗証番号は

 課長クラスの担当者が週代わりで管理し

 支店長でさえ知ることはできない」


「もう9時半だ 10時に支店長と担当課長が来ちゃいます」

「担当課長のデスクは?」

「あそこ あの奥です」

「出身は?」

「名古屋だったかな?」

「バカか! 東京第一 産業中央どっちの出身かって聞いてんだ」

「産業中央です」

「年は?」

「42〜43かな?よし だったら…」

「どうするんですか?」

「ちょっと何やってるんですか?」

机の下にもぐりこむ半沢。
机の下に暗証番号のメモがはってありました。

「あった」

「あ〜ッ!」

「暗証番号は8桁もあるんだ

 忘れてしまったときのためにこうやって貼っておくのが

 産業中央バブル入行組の悪しき伝統なんだよ」

「でも鍵は キーボックスの番号はそれとは別ですよ」

「1214

 第二ロックはいつも変わらず 1001だ

 あなたのおかげで私は何度も ここに来て

 徹底的に いじめられましたからね

 現実逃避するためこの番号を覚えた」


「よし!」

近藤さんのおぼえていた暗証番号のおかげで
キーボックスがあきました。

金庫をあける2人。

「あッ あれです!あの二つの箱」

その頃駐車場に支店長が到着し
見張っていた古里が報告。

「もうきたぞ あきらめろ おいッ!」

「おい 半沢 これ以上は…」

「もうダメだ そこまで来てる」

「閉めろ」

「えッ?」

「いいから いったん閉めろ」

「あッ ああ」

金庫を閉める古里。そこ支店長たちが到着。

「あッ どうもお疲れさまです 支店長」

「どうした 古里」

「私も 疎開資料を運ぶのをお手伝いしようと思いまして」

「そうか すまんな」

「いえいえ」

「じゃ 羽出課長早速 頼む」

「はい」

半沢たちがいない。

「何をやってんだ 手伝え」

「ああ はい」

「お願いします」

「よし 運び出せ」

「はい ああ はい」

半沢たちが隠れていました。

「おい 何をやってるんだ早くしろよ!

「古里 どうにかしろ

 今 閉められたら明日の朝まで出られない」

「何を立ち止まってんだ早く動け!」

「あッ は… はいああ〜」

わざと転んで書類をぶちまけてしまう古里。

「あ〜〜もうしわけありません

 すぐ持っていきますので

 そちらを先に運んでいただけますか」

「早くしろよ」

「はい」

「行こう」

危機一髪。

「だから無理だって言ったんだよ」

「いや やってやれないことはない

 貝瀬支店長には

 あとで じっくり話を聞かせてもらう」

この件は後日相談と書かれた告発書類を発見。

外に出る半沢たち。

「助かったよ 近藤

 お前がいなかったら 金庫室を開けることはできなかった」

「いや 礼を言うのは俺のほうだ

 融資の件…」

回想

「古里!もう一つ お前に言っておく

 タミヤ電機への融資の稟議書き渋っているそうだな」

「あれは その 必要な資料が…」

「確かに中期計画書は 田宮社長の

 ビジョンが見えないところもあるが

 それを差し引いても 現実的なしっかりした稟議書だった

 どこがダメなんだ 言ってみろ」

「それは その…

 支店長が 金融庁検査の前に簡単に融資は通すなと…」

「全部 他人のせいか!

 お前みたいなやつに与信判断する資格はない

 明日中に書け! いいな」

半沢の迫力にさからえない古里。

「やっぱりお前はすごいよ。

 昔と少しも変わってない

 お前と一緒にいると

昔の自分に戻れるような気がしてくる」


「お前だって変わってないよ

 タミヤ電機のために一生懸命

戦ってるじゃないか

 肩書や居場所は違っていても

お前は お前だ

 だろ?」


戸越にお礼をいう半沢。

「戸越さん ありがとうございました。

 あなたの協力のおかげで

 どんな不正が行われたか分かってきました」

「礼を言われることじゃない

 古里を ギャフンと言わせたかったのは 俺も一緒だ

 それに また伊勢島ホテルへ戻れることになったからな」

「そうですか よかったですね」

「あんたが頼んでくれたんだろ?湯浅社長に」

回想

「もう一つ お願いしたいことが…

 御社の社員だった戸越さんのことです」

とあのとき頼んだ半沢。

「湯浅社長から直々に電話があって謝罪されたよ

 あんたから事情を聞いたとね」

「私は ただ本当のことをお伝えしただけです」

「正直 東京中央銀行に対する不信感は拭えない

  だが 線は細いが

 イノシシみたいなあんたが担当になったことが

 唯一の望みだ

 伊勢島ホテルを救ってください

 頼みます」

「バンカーとして 全力を尽くします」

「例の報告書 誰のサインが書いてあった?」

「貝瀬支店長ですが」

「こんなこと言ったらせっかくの あんたらの努力を

 無駄にしちまうことかもしれないが…

 歴代京橋支店長と伊勢島の関係は黒い闇だ」

「歴代の支店長!?」

「貝瀬は その闇の入り口にすぎないトカゲの尻尾だ

 むしろ もっと上の…」

「半沢 大和田常務がお呼びだ」

「そいつが闇の中心だ

 そいつの証拠を探せ」

タミヤ電機

「おはようございます」「おはようございます」

近藤が報告。

「みんなきいてください。

 東京中央銀行から連絡があり無事に融資が通りました」

「やっとですか 随分 時間がかかりましたね

 元銀行さんの割には」

「力不足だったことは謝ります

 これからは もっと会社の役に立てるよう頑張るので

 どうかみんなの力を貸してください」

「無理しなくていいですよ

 自分達は今までどおり やっていきますから

  ねえ 課長」

「そうだな」

「早速ですが 今後の詳細な計画書を作りたいので

 前期までの決算書を出してもらえますか?」

「近藤さん何度 言ったら分かるんですか

 そういうことは 私がやりますから

 余計なまねしないでください

 あなたは 銀行から お金を引き出すことだけ

 考えてればいいんだよ

 元銀行さんなんだから」

「さあ 仕事だ」

また黒いものが・・。
でも半沢の言葉を思い出す近藤さん。

『大学時代を思い出せ』

『やってやれないことはない』

『お前みたいなやつに与信判断する資格はない

 明日中に書け!』

『肩書や居場所は違っていてもお前は お前だ

 だろ?』

「野田さん お願いします

 決算書を持ってきてください」

「くどいな だから そういうことはやめてくれって言ってんだろ」

ついに叫ぶ近藤さん。

「野田!

 決算書 持ってこいと言ってるんだ

 一つだけ言っておく

 今の私はこのタミヤ電機の経理部長です

 二度と 元銀行さんなどと呼ぶんじゃない

 野田 返事は!」


「はい」

「小川!

 お前もだ」

「はい」

黒いものがなくなった!

大和田常務と岸川と半沢。

「私にききたいこととはなんでしょうか」

「君が京橋支店で 何かの不正を調べているという

 噂を聞いたんだが 事実かな?」

「はい 事実です」

「穏やかじゃないねえ

 金融庁検査を目前に不正などという噂を

 常務としては聞き流すわけにもいかなくてねえ

 ちょっと詳しく話してくれないか」

「どうした 半沢 知っていることは全て報告したまえ」

「分かりました

 実は 伊勢島ホテルで120億の損失が出たことを

 銀行に内部告発した人物がいました」

「ほう」

「しかし 京橋支店の貝瀬支店長と古里課長代理は

  その内部告発を握りつぶし

 損失が出ることを知っていながら

 伊勢島に 200億の融資が実行されるよう仕向けました」

「貝瀬君と古里君が!?何か証拠はあるのか?」

「ございます」

「どんな証拠だ? 見せたまえ」

「今は お見せすることはできません」

「なぜだ?」

「最重要疎開資料として私が保管しております

 それに この不正の裏には

 貝瀬支店長に指示を出した別の人物がいる疑いがある

 それが誰なのかハッキリするまでは

 安易な報告は差し控えたほうがよろしいかと」

「なるほどね けれどもねえ

 貝瀬支店長に指示を出せるような人物となると…

 まずは前京橋支店長だった岸川部長」

「えッ 」

「まさか 君なのかね?」

「ご冗談を」

「はあ 違う

 でないとすると

 君の前に京橋支店長を務めていた私

 その前が帝国重工に行った伊藤さん

 その前が…」

「残念ながら 常務以前の支店長の方々は皆

 現役を退いていらっしゃいます

 歴代支店長で現役なのはお二人だけだ」

「あら まいりましたねえ

 このままじゃ容疑者にされてしまうよ

 さすが半沢君 冗談も一流だね」

「冗談で申し上げてるつもりはございません

 伊勢島の担当としては

 お二人を疑うのは当然だと思いますが

 いずれにしても 今回の伊勢島問題

 諸悪の根源は京橋支店にある

 私は そう見ております」

「そこだよ 私が支店長を務めていた頃は

 何の問題もなかったんだ 今回の問題も

 法人部に担当替えした矢先に起きたことだ

 旧東京第一が率いる法人部にこそ

 諸悪の原因があると私も思っていますよ」

「伊勢島への融資は法人部に移る前

 すでに決定されています

 にもかかわらず あなたは

 担当になって わずか3ヵ月の時枝に

 全ての責任を押し付けて 彼を出向させましたね

 銀行は人事が全て…

 あなたは そうやって これまでも

 邪魔な人間や 必要のないものを

 切り捨ててこられたんでしょう

 一つ お聞かせください

 大和田常務が目指す銀行とはどのような銀行でしょうか」

「何だね いきなり」

「ああ いい

 決まってるじゃないか

 この国の経済を支える世界一のメガバンクだよ

 我々 メガバンクは絶対に つぶれてはいけないんだ

 それだけは死守せねばならない

 もし つぶれでもしたら

 何百万人 何千万人が路頭に迷うか 分かってますか?

 銀行がこの日本経済が生き残るため

 多少の犠牲は やむを得ない

 私は現実的な話をしてますからね

 そう思いませんか? 半沢君」

「いいえ 私は そうは思いません

 銀行は所詮 金貸しですよ 常務

 誰かに金を貸してその利子で儲けてなんぼ

 それだけのことです

 だからこそ 私達は

 しっかりした目で貸す相手を見極め

 彼らの未来に

 責任を持たなければ

ならないのではないでしょうか

 競争に負けるわけにはいかない

 派閥争いも大いに結構です

 ですが 一つ忘れてはならないことがある

 それは 我々 銀行員は

 銀行を守るためではなく

 この国で働く人々のために

仕事をしてるということです

 銀行のための国民ではなく

 国民のための銀行でなければならない

 その思想を忘れてはならないんです

 私達は 上司や組織のために

 仕事をしてるわけではありません

 たとえ相手がどんなに小さな企業でも

 彼らが真剣に仕事をしてるかぎり

  その熱意を踏みにじる権利は

 我々にはないはずです」


「はい よく分かりました

 しかしね 君と私は

 基本的には同じことを

 マクロとミクロの視点の違いから言いかえてるだけだ

 分かるだろう?

 話を元に戻そう 何の話だったかな?」

「どこかの誰かが 伊勢島ホテルの内部告発をもみ消した

 それが誰なのかなぜ そんなことをしたか

 今は分かりません

 ですが 今回の件で

 伊勢島ホテルが大きなダメージを被ったことは事実です

 私は 担当として

 どんなことをしてでも伊勢島ホテルを守ります

 たとえ地べたをはいつくばり土下座をしてでも

 伊勢島を再建してみせる

  そのためにはたとえ相手が誰であれ

 全力で戦う覚悟です

 覚えておいてください」

「土下座?

  土下…

 そんなものは 情に訴えるだけのくだらないパフォーマンスだよ

 何の意味もない

 確かに 今まで散々私の足にすがる輩を見てきたが

 私は どうもピンと来なくてねえ

 そうするやつらはどいつもこいつも

 無能なやつばっかりだったよ」

「あなたには分からないでしょうね

 土下座をする人間の

 必死さも

 悔しさも…」


父を思い出す半沢。

「大和田常務

 もし私が伊勢島ホテルを救えなければ

 あなたに対する これまでの非礼

 土下座して お詫びいたします

 ですが もし

 隠蔽を指示した人物が あなたなら

 私に土下座して詫びてください」


「調子に乗るのもいい加減にしろ!」

「私は常務に申し上げてるんです

 横から口を挟まないでもらいたい」

「いいだろう

 そんなことができるものなら

 やってみたまえ」

金融庁検査当日

「金融庁検査局主任検査官の黒崎です

 ただいまより金融庁検査を行います

 よろしくね」

半沢の前にでてくる黒崎。

「お久しぶりねえ」

黒崎もキター!!



東京編スタート、おもしろかった!!
またしても無理難題をおしつけられて
さっそく大和田を敵にまわしてしまった半沢。
最初は目をかけてもらってたのに
はやくも敵対宣言しちゃって
悪事を暴く前に握りつぶされないようにしないと。

大阪はためてためてのまとめて倍返しでしたが
今回は倍返しが最初から小出しにあって
すごく痛快でした!
古里をおいつめるあたりとか
今にも死にそうでみていられなかった近藤さんが
ちゃんと自分をとりもどすところとか
みててすっきり。
金庫のシーンはどうやってきりぬけるんだろうと
ドキドキ、そして期待は裏切らない。

黒川も半沢へリベンジのために
でてきたみたいだし、ますます楽しみです(^O^)


半沢直樹…堺雅人
半沢花…上戸彩
渡真利忍…及川光博
黒崎駿一…片岡愛之助
近藤直弼…滝藤賢一   
内藤寛…吉田鋼太郎
岸川慎吾…森田順平
貝瀬郁夫…川原和久
古里則夫…手塚とおる
田宮基紀…前川泰之
野田英幸…利重剛
湯浅威…駿河太郎   
羽根夏子…倍賞美津子
半沢慎之助…笑福亭鶴瓶   
中野渡頭取…北大路欣也
大和田常務…香川照之










2013.08.26 Monday 08:39 | comments(0) | trackbacks(11) | 
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半沢直樹「5億から120億!東京で、倍返しなるか本店に異動した半沢は巨大な敵と戦う!!」
思い切りましたね。第二章・東京編のスタート。キャラが立ちまくってた大阪編から一新。顔ぶれも変わりましたが、黒役の憎々しさは、あいかわらずです。 (予告編で、らぶりん・黒崎、再びキター!と嬉しくなったのは私だけ? (^^;)) 扱う額も二桁違いと、ぐん
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「半沢直樹」 第6話
 さて、半沢が東京本部営業第二部に異動してから1年が過ぎたようです。 半沢が会議で見せた確信に満ちたきりりとした表情、それに応える部下たちの目を見ているだけで、この一年 ...
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《半沢直樹−第二部》#06
25分拡大。 東京中央銀行 頭取室 金融庁の長官から中野渡頭取に金融庁検査が入ると知らせが来た。 <半沢直樹が東京中央銀行大阪西支店から本部の中枢 それもエリートが集う精鋭集団と言われる営業第二部に栄転して1年が経とうとしていた。 かつて5億の融資失敗の
| まぁ、お茶でも | 2013/08/31 8:59 PM |